1988 Fiscal Year Annual Research Report
肥満者の脂肪細胞による脂肪細胞-成長因子(仮称)の細胞生物学的研究
Project/Area Number |
63570166
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Research Institution | 佐賀医科大学 |
Principal Investigator |
杉原 甫 佐賀医科大学, 医学部, 教授 (50039509)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
戸田 修二 佐賀医科大学, 医学部, 助手 (80188755)
米満 伸久 佐賀医科大学, 医学部, 助手 (60145191)
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Keywords | 肥満 / 脂肪細胞 / 成長因子 / 増殖 / 分化 / コラーゲン |
Research Abstract |
この研究は脂肪細胞の成長因子を検討するものであるので、増殖相の脂肪細胞をまず得る必要があった。これに相当するものは線維芽細胞様脂肪細胞である。種々の試みの結果、私共は以下の方法を開発した。即ちラット、マウス及びヒトの腹部皮下脂肪組織を取出し、細切し遠心して浮遊する組織片のみを得て天井培養法を行なった。天井培養法とは脂肪細胞のように培養液中で浮遊する細胞に対して、私共が開発した。培養法で、フラスコに培養液を100%充満させフラスコの内上面(天井面)に接着させるものである。さて、脂肪組織片は培養2-3日で接着し線維芽細胞様脂肪細胞がはえ出して、活発に増殖した。そして、局所的に充満した場所から、細胞質内に脂肪滴が生じ、単胞性脂肪細胞にまで分化した。これらの細胞は酵素組織化学によっても脂肪細胞であることが同定された。 この細胞系を用いて、脂肪細胞の増殖を促進させる因子(成長因子)の追求を行なった。まず、新生児牛血清は、10%以上添加状態において、胎児牛血清よりも増殖を促進させ、かつ分化もうながした。インシュリン(0.1mu/ml以上)は、新生児牛血清の添加状態で、成長因子となり得た。成長ホルモン、ステロイドホルモンは、明らかな効果を示さなかった。次に脂肪細胞自身が成長因子を分泌している可能性があるので脂肪細胞の古い培養液、即ち、コンディション・メディラムを、脂肪細胞に与えた。その結果、10%の濃度で加えることにより、軽度ないし中程度、脂肪細胞の増殖を促進した。又、成長因子として液性因子ではないが、細胞間マトリックス、中でもコラーゲン(実際にはコラーゲン・ゲルの状態で与える)は、成熟脂肪細胞の脱分化と増殖を明瞭に促進した。次年度もひきつづき、脂肪細胞に対する成長因子を追求していきたい。
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[Publications] 杉原甫、米満伸久、戸田修二、宮原晋一、船津丸貞幸、松本智子: Journal of Lipid Research. 29. 691-697 (1988)
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[Publications] 杉原甫、米満伸久: 第8回日本肥満学会記録. 8. 69-70 (1988)
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[Publications] 杉原甫、米満伸久、宮原晋一、戸田修二: 日本病理学会会誌. 77(補). 55 (1988)
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[Publications] 杉原甫、船津丸貞幸、米満伸久、戸田修二: International Journal of Obesity. (1989)
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[Publications] 杉原甫、米満伸久: 第9回日本肥満学会記録. (1989)
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[Publications] 杉原甫、米満伸久、戸田修二、宮原晋一: 日本病理学会会誌. (1989)