1989 Fiscal Year Annual Research Report
サワガニに寄生する肺吸虫2種の地理的分布様式と宿主特異性
Project/Area Number |
63570173
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
記野 秀人 浜松医科大学, 医学部, 助手 (70115476)
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Keywords | サワガニ / ウェステルマン肺吸虫 / 宮崎肺吸虫 / サワガニの採集法 / 同所的分布 |
Research Abstract |
前年度に引き続き、サワガニの採集法の検討を行なった。通常用いられる石起こしによる採集法で得られたサンプルを、方形枠を用いた全数採集法のサンプルと比較すると、甲幅の小さい若齢の個体の割合が極端に小さく、サワガニ個体群の齢構成を反映できるのは、甲幅が16mm以上の個体についてのみであった。従って、肺吸虫の調査に当たっては、甲幅16mm以上の個体について感染状況を整理することで相対的評価が加納になるものと考えられた。また、トラップを用いた採集法のサンプルは、石起こし法とほぼ同様の傾向を示した。 前年度に静岡県引佐郡三ヶ日町で採集された肺吸虫の中にウェステルマン肺吸虫に酷似する個体が発見されたが、こうした個体はその後も確実に採集され、3頭の犬か回収された50虫のうち6虫(12.0%)がこのタイプであった。圧平標本で見る限り、これらの虫体の卵巣はウェステルマン肺吸虫に酷似するものの、分岐の状態がやや複雑であるなど必ずしも典型的とは言えなかった。そこで、その形態を詳細に検討するために連続切片からコンピュ-タによる立体像の再構築を行なった。その結果、これらの虫体の卵巣は、かなりの変異はあるものの、基本的にはウェステルマン肺吸虫の特徴とされる6本の分岐を持っていることが明らかになった。また、長瀬ら(1982)がウェステルマン肺吸虫として報告した新城市のタヌキから得られた虫体もほぼ同様の形態を示していた。従って、この地域には宮崎肺吸虫とウェステルマン肺吸虫が同じサワガニ個体群の中に混在していることが明らかとなった。しかし、第1中間宿主については、未だにいずれの貝も採集されておらず、今後とも調査を継続する必要がある。
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