1988 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
63570271
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
何川 凉 岡山大学, 医学部, 教授 (30031941)
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Keywords | エタノール / エタノールの死後産生 / 死体アルコール / 臓器保存とエタノール産生 / n-プロパノール |
Research Abstract |
1.剖検死体から血液および心、肝、腎、脳、肺、脾の各臓器の一部をとり、2分して、一方は10%glucose5ml、他方は水5mlを加え、9〜18℃の室温に放置したところ、glucose添加は著明なethanol産生を示した。 2.人血のみ、人血にglucose添加、人血に腐敗菌添加、人血にglucoseおよび腐敗菌添加のものを15〜23℃の室温に放置し、経日的にethanpl産生を比較した。その結果第4グループは1日で既に0.75〓と著明な産生があり、第3グループは軽度な産生、第1および第2グループは殆ど産生がなかった。 3.人血にこうじ、酵母、腐敗菌を加え、ethanolとn-propanolの産生を経日的に比較した。その結果こうじでは6日でethanol25〓にも達し、こうじでは6日で0.73であった。n-propanolはethanolに比し腐敗菌の場合より少量であった。 4.ラットの胃内に酵母の水溶液を入れて窒息死させ、心臓血、胸腔液、腹腔液、胃内容のethanolおよびn-propanol産生をみた。その結果1日で胃内容は0.6〜1.5〓のethanolを示し、ついで腹腔液、胸腔液、心臓血の順にethanolがみられた。n-propanolはやはり少量であった。 以上の成績から、死体におけるethanol産生には腐敗菌と糖質が重要であり、保存条件として高い室温が有効であった。n-propanol産生はethanolの20分の1以下であった。こうじおよび酵母によるethanol産生は当然のことながら腐敗菌より強いが、同時に産生されるn-propanolは比較的少量であった。死体における血液、諸臓器、胃内容などのethanol濃度を評価するに当って重要な知見がえられた。なおethanol代謝に関係する酵素系、酵素阻害剤、抗生物質などの添加につぎ研究継続中である。
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