1988 Fiscal Year Annual Research Report
再生肝における細胞癌遺伝子の逐次的発現に関する研究
Project/Area Number |
63570316
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
金子 義保 東京大学, 医学部, 助手 (90124669)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浜崎 卓 東京大学, 医学部, 医員
中山 利文 東京大学, 医学部, 医員
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Keywords | 肝再生 / 細胞癌遺伝子 / 転写調節機構 / 細胞増殖因子 / 肝細胞 |
Research Abstract |
肝再生過程での細胞癌遺伝子の役割を分子レベルで解析するためにinvitroの実験系の確立を試みた。ヒト肝細胞と肝癌細胞とを単層培養し、無血清培地で増殖を停止させたあと、血清や細胞増殖因子PDGFやEGFなどで細胞増殖を刺激した。刺激後c-fos mRNAはすみやかに増加し、1時間後にピークとなったあと低下した。4時間後には再びc-fos mRNAは増加しはじめ、6時間後にピークに達したあともとのレベルまで低下した。c-fosに遅れてc-myc mRNAにも2相性の上昇が認められた。最初のピークは増殖刺激後4時間後にあり、第2のピークは8時間後に認められた。細胞増殖因子によってもたらされるc-fosやc-myc mRNAの上昇は、細胞をシクロヘキシミド処理することで著明に増強した。この結果は細胞増殖因子によるc-fosやc-mycの転写誘導が新たな蛋白合成を必要とせず、また転写抑制蛋白の存在をも示唆している。異常の結果はinvivoでの肝再生過程と同様であり、この実験系が肝再生の分子レベルの研究に利用し得ることが示された。肝再生における細胞癌遺伝子の役割を知る上では、c-fosやc-mycのmRNAのみならずc-fos蛋白やc-myc蛋白の解析も重要と思われる。そこでこれらの培養細胞から核を分離し非ヒストン蛋白を抽出して、それらに含まれるc-fos蛋白、c-myc蛋白、c-myb蛋白を特異抗体を用いたウエスタンブロット法で解析した。抗c-fos蛋白抗体では分子量約5.5万と約9万のところにバンドが認められ、分子量9万のバンドはサンプルの熱処理で消える。抗c-myc蛋白抗体と抗c-myb蛋白抗体ではそれぞれ5万と9万の分子量のところにバンドが認められた。この実験によりc-fos蛋白の約半分がヒト肝細胞や肝癌細胞においても、おそらくc-jun蛋白と複合体を形成していることが示された。現在このc-fos蛋白-c-jun蛋白複合体が細胞増殖に関連するどのような遺伝子の転写調節領域に結合するのかについての解析をすすめている。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] 金子義保: Biochemical Biophysical Research Communication. 155. 305-310 (1988)
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[Publications] 金子義保: 肝臓. 29. 824 (1988)
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[Publications] 金子義保: 内科. 61. 608-611 (1988)
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[Publications] 金子義保: Proc Amer Assoc Cancer Res. 29. 447 (1988)
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[Publications] 金子義保: 肝臓. 29 suppl. 77 (1988)
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[Publications] 金子義保: "ケーススタディ検査値の診断プロセス" 中外医学社, (1989)
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[Publications] 金子義保: "肝臓の生理学" 中山書店, (1989)