1989 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
63570387
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Research Institution | University of Tokyo, Faculty of Medicine |
Principal Investigator |
井上 博 東京大学, 医学部(病), 助手 (60151619)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川久保 清 東京大学, 医学部(病), 助手 (30152929)
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Keywords | 交感神経 / 迷走神経 / 心筋硬塞 / 不応期 / 心室性不整脈 |
Research Abstract |
初年度は交感神経が、貫壁性心筋虚血により心尖部への支配を,不均一にかつ徐々に失うことを認めた。迷走神経は交感神経に拮抗し,その神経支配が遮断されると交感神経の不整脈誘発作用に拮抗できなくなる。迷走神経は交感神経と異なり心内膜直下を走るので,心内膜下虚血で容易に神経支配が遮断(徐神経)されうる。麻酔開胸犬で,左冠動脈前下行枝の対角枝を結紮し心筋虚血を作成した。迷走神経は両側とも頸部で切断し遠位断端に刺激用電極を刺入し、刺激は4msec幅,20Hzのパルスで,洞停止又は完全房室ブロックを生じる出力より0.05mA強い電流量とした。対角枝結紮により心筋虚血が11頭中の9頭で作成された。虚血作成5分後には35ヶ所の心尖部のうちの1ヶ所で,迷走神経刺激による心室不応期の延長が消失した(徐神経)。虚血作成3時間後までに合計8ヶ所(23%)の部位で迷走神経の徐神経が徐々に生じた。9頭17ヶ所の心基部の試験部位では,虚血作成前は迷走神経刺激により不応期は6±1msec延長し,虚血作成3時間後は5±1msecと変化は認められなかった。心尖部の残りの27ヶ所の部位では,虚血作成後も迷走神経刺激による不応期延長は影響されなかった(前7±1msec vs 虚血作成3時間後5±1msec)。徐神経された8ヶ所では不応期の延長は,虚血作成前が6±1msecであったのに対し,虚血作成3時間後には0±1msecと有意に減少した(p<0.005)。 以上より,急性心筋虚血が生じると,心尖部側の健常心筋で迷走神経刺激による不応期延長が失われる。この徐神経は虚血発生後30分以内に出現し始め,その範囲が不均一に拡大して行く。迷走神経の徐神経は,交感神経に対する拮抗作用の消失を意味し,心筋硬塞急性期の心室性不整脈発現に関与している可能性がある。
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