1988 Fiscal Year Annual Research Report
ライ症候群におけるミトコンドリア機能障害に関する研究-高アンモニア血症の発症機序及び脂肪酸代謝異常、カルニチン代謝異常に関する検討-
Project/Area Number |
63570426
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
新美 仁男 千葉大学, 医学部小児科, 助教授 (40009147)
|
Keywords | ライ症候群 / ミトコンドリア / サリチル酸 / 脂肪酸代謝異常 / ジカルボン酸 / カルニチン |
Research Abstract |
単離ミトコンドリア(Mt)を用いたin vitro再構成系を用いてサリチル酸(SA)のオルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)成熟過程に及ぼす影響を調べ、ライ症候群における高アンモニア血症の発現にSAが関与することを示唆するデータが得られた。反応時に加えたSAはOTCの成熟過程を1mMではほとんど阻害しなかったが、3mMでは部分的に、10mM以上では完全に阻害した。また3mMSAでMtを前処理したところOTCの成熟過程は強く阻害された。すなわちSAはヒトの中毒血中濃度に相当する3mM以上の濃度において、OTCの成熟過程をin vitroで濃度依存性に阻害した。この阻害作用はSAがMtの形態異常を起こす事またはuncouplerとして膜電位を破壊する事等によると考えられた。 次に2例のライ症候群の臨床例についてその脂肪酸代謝障害の検討のため、尿中有機酸および血中・尿中カルニチンを測定し以下の結果を得た。入院時の尿中有機酸分析ではadipic,suberic,dodecanedioicなどのジカルボン酸の著名な排泄が認められ、さらにケトン体や乳酸・ピルビレ酸の大量排泄も認められた。正常対照に比し血中遊離カルニチンは低値、アシルカルニチンは高値を示し、2次的なカルニチン欠乏の状態であることが判明し、尿中へは遊離・アシルの両カルニチンとも排泄が増多していた。この尿中アシルカルニチンをSecondary Ion Mass Spectrometryを用いて同定したところ、アセチルのピークが最も大きく、プロピオニル、イソバレリル、さらにジカルボン酸のアシルカルニチンも排泄されている事を確認した。患児に対しカルニチンを投与したところ、尿中ジカルボン酸の急速な排泄低下と馬尿酸の排泄増加を認め、ライ症候群にカルニチンが有効であることを生化学的に世界で初めて証明し得たと考える。今後遺伝子クローニングの手法を応用し、ライ症候群における脂肪酸、カルニチン代謝異常を深く解析し、本症の本態に迫りたい。
|
Research Products
(1 results)