1990 Fiscal Year Annual Research Report
日本における小児疾患100年の変遷に関する研究ー東大小児科過去100年間の総入院患児のカルテ分析
Project/Area Number |
63570428
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鴨下 重彦 東京大学, 医学部・小児科, 教授 (60048973)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伏島 容子 東京大学, 医学部・小児科, 医員
榊原 洋一 東京大学, 医学部・小児科, 講師 (10143463)
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Keywords | 東大小児科入院患者病歴 / 100年間 / 疾病構造の変遷 |
Research Abstract |
本研究の目的は、東大小児科開設以来百年間にわたりほぼ完全に保存されている入院病歴を見直し、疾患統計を作り、時代と共に疾患構造がいかに変遷したかを調べることにある。このような病歴は他では得難い貴重な資料である。我々は長期間管理された病歴をもとに疫学研究することの意義は大きいと考え、当科開設以来の総ての入院病歴を見直す作業を開始した。今回の研究では、1890年以降百年間の東大小児科入院患者病歴と退院簿を5年毎に1年分ずつ抽出し、その年度の総ての入院患者につき、患者名、性、年齢、転帰を検討し、疾患群別に分類した。さらに各疾患群ごとに、主要な疾患による入院患者の推移を検討した。病歴を5年毎に1年分ずつ抽出したので、百年間の総入院患者の約20%、10463名が分析の対象となったが、今後総ての年度につき分析を続けてゆく予定である。 当科の年間総入院患者数は300〜900人/年で平均580人/年、百年間の総入院患者数は約六万人である。入院患者における年度別死亡率は、明らかに漸減傾向にあるが、1945年は敗戦下の社会情勢を受けて、26%と百年間の統計期間中で最高値となり、戦争が小児の健康に及ぼす悪影響を如実に示す結果となった。死亡率はその後減少し、最近は4〜5%台である。 疾患群別にみると、戦前及び戦後間もなくは、入院患者の大部分が感染症と栄養障害とで占められていた。1960年以後は感染症による入院は激減したが、これには抗生物質療法の一般化や予防接種の普及といった医療側の要因と、栄養状態の向上や環境衛生の改善といった患者側要因とが密接にかかわっていたことが推察される。診療の専門分化や、検査法の進歩、診断技術の向上にともなって、他の系統疾患が相対的にも増加した。また最近の一つの傾向として、検査入院の増加があり、小児科の専門分化の方向を反映しているものと思われた。
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