1988 Fiscal Year Annual Research Report
小児期におけるB型肝炎ウイルスDNAの肝細胞への組込みと癌化のメカニズムの解明
Project/Area Number |
63570434
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
森島 恒雄 名古屋大学, 医学部, 講師 (90157892)
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Keywords | B型肝炎ウイルス / DNA / 組込み / 発癌 / 肝細胞癌 |
Research Abstract |
1.サザンブロット法を用いて新生児から成人までのHBウイルスキャリアの生検肝組織中へのHBV-DNAの組込みについて調べたところ以下の結果を得た。(1)、5〜10才前後の慢性活動性肝炎及び無症候性キャリアのほとんどにウイルスDNAの組込みを認めた。その様式は、7〜20kbのdiffuseなsmearとしてサザンブロット法で確認されたことから、heterogeneousと考えられた。(2)、15才〜成人になると一部にキャリアでありながら組み込みが検出できない例が存在する一方、組込みを確認した群ではdiffuseなsmearを示すものからはっきりしたbandを示す例まで存在し、組み込みの様式が多様化して一部でmono〜oligoclonalな細胞の増殖を示唆する所見が得られた。(3)小児の11才の肝細胞癌2例(男・女)では一例にheterogeneousな別の症例ではmonoclonalと思われる組込み様式を確認した。 2.molecular cloningにより小児慢性肝炎の一部で、組込み部位を中心にrearrangementが認められた。 以上の1及び2から、感染後組込みが生じた部位を中心に肝細胞DNAにrearrangementが生じうること、それを引き金に種々のcellular-oncogeneの活性化が生じうること、そして一部でmonoclonalな細胞の増殖がおこり癌化につながると推測された。 今後さらにmolecular cloningによる組込みパターンの解析を進めるとともにcollular-oncogeneの各段階の活性化について検討していく予定である。
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[Publications] 松山孝治: 日本小児外科学会雑誌. 24. 899-907 (1988)
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[Publications] Yaginuma,K.: Journal of Virology.61. 1808-1813 (1987)
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[Publications] 森島恒雄: 臨床とウイルス. 16. 314-320 (1988)