1988 Fiscal Year Annual Research Report
小児IgA腎症の進展・増悪に対する糸球体内フィブリン・フィブリノゲンの関与
Project/Area Number |
63570453
|
Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
平 康二 奈良研立医科大学, 小児科, 助手 (10201592)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福井 弘 奈良研立医科大学, 小児科, 教授 (20075104)
|
Keywords | IgA腎症 / フィブリン@フィブリノゲン関連抗原(FRA) / FDP / 免疫電顕Dーdimer / 糸球体内血液凝固 |
Research Abstract |
今年度我々は、IgA腎症患児の糸球体内フィブリン/フィブリノゲン関連抗原(FRA)の局在を蛍光抗体法とprotein A goldを用いた免疫電顕にて観察し光顕像、IgA沈着度、electron dense deposits(EDD)、さらに、尿所見、尿FDP量らとの関連性について検討した。さらに沈着せるFRAの性状をDーdimerモノクロナル抗体や、組織片のモノクロール酢酸(MCA)処理にて分析し、尿FDP量はラテイクス凝集法、その分画はwesten bloting法にて測定した。その結果、1)MCA処理後も残存せるFRA(MCAーinsoluble FRA)は、巣状/分節状または、軽度びまん性増殖像を呈する群では、係蹄壁を中心にみられた。一方、半月体/硬化性変化を伴う中等度増殖群では、係蹄壁のみならずメサンギウム、硬化部にも認められた。2)モノクロール酢酸にて消失せるFRA(MCA soluble FRA)はIgAとともにメサンギウム領域に認められた。3)Dーdimerは係蹄壁を中心に観察されMCAーinsoluble FRAの蛍光像と一致するものが多かった。4)EDDは全例、メサンギウム領域にみられ、さらに半月体/硬化性変化を伴う中等度増殖群では、メサンギウムのみならず、上皮下、内皮下にも認められるものがあった。FRAは免疫電顕での観察の結果、EDD内に観察された。5)増殖性変化の強いもの、MCAーinsoluble FRAが強く認められたものほど血尿、蛋白尿は強く、尿FDP量も増加し、とくにDーdimerの出現頻度が高かった。しかし、その分画には一定の傾向はなかった。以上より、MCAーinsoluble FRAは基底膜や内皮細胞の損傷に続発せる管腔内血液凝固の結果生じた安定化フィブリンと予想され、増殖性変化が強くなれば、フィブリン形成はメサンギウム〜硬化部へと拡がり、そして、その一部は尿中へ反映したと考えられた。一方、メサンギウム領域のMCA soluble FRAは、IgA沈着と同一機序によるメサンギウムの貧食作用による、血中フィブリノゲン、FDP、管腔内フィブリン分解産物の取り込みと考えられた。
|
Research Products
(2 results)