1989 Fiscal Year Annual Research Report
インスリンレセプタ-異常症のインスリンレセプタ-遺伝子の解析とそのクロ-ニング
Project/Area Number |
63570523
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Research Institution | Chiba University School of Medicine |
Principal Investigator |
牧野 英一 千葉大学, 医学部・第二内科, 講師 (50009578)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
蛯名 洋介 徳島大学酵素科学研究センター, 教授 (00112227)
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Keywords | インスリン受容体 / インスリン受容体遺伝子 / 欠失 / インスリン受容体異常症 / インスリン抵抗性 / 糖尿病 |
Research Abstract |
インスリン受容体異常症はインスリン抵抗性と黒色表皮腫を特徴とする症候群で、タイプAとタイプBに分類される。前者はインスリン受容体の減少が先天的に存在し、後者はインスリン受容体抗体がその原因である。その後タイプAと同じ異常を呈するにも関わらずインスリン結合能の低下がみられない症例が発見されタイプCと呼ばれている。我々は別刷に示すような興味ある症例、インスリン受容体異常症タイプC(千葉)を経験し、その遺伝子異常を明らかにした。 症例は17才女性。低身長と黒色表皮腫、高インスリン血症、著明なインスリン抵抗性糖尿病を示した。発端者の母親も同様に低身長とインスリン抵抗性糖尿病、高インスリン血症を示し、糖尿病性腎症に伴う腎不全、敗血症により41才で死亡した。家系調査で、母方の祖父と伯父に同様に低身長とインスリン抵抗性と思われる糖尿病を認めた。赤血球、培養皮膚線維芽細胞、EBウイルスでトランスホ-ムしたリンパ球でのインスリン結合能は正常だが、インスリン受容体の自己燐酸化能及びキナ-ゼ活性は発端者及び母親で低下がみられた。インスリン受容体遺伝子のサザンブロット法による検討で、制限酵素BglIIで発端者と母親のみに13kbの異常バンドが認められ、この疾患と強く連鎖している事が示唆された。この母由来異常バンドのクロ-ニングによる検討で、βサブユニットキナ-ゼメインをコ-ドするExon17の#1013のGly以降の欠失が明らかとなった。即ちこの変異受容体は#1030のATP結合部位のLysを欠くためキナ-ゼ活性を持たないと推定された。本症例のインスリン結合能は正常であることよりこの変異受容体は細胞膜上に発現している可能性は大で、この変異受容体が正常受容体を抑制したためにヘテロの異常でも、インスリン抵抗性糖尿病を発症したと結論される。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] M.Taira,M.Taira,N.Hashimoto.et al: "Human diabetes associated with a deletion of the tyrosine kinase domain of the insulin receptor" Science. 245. 63-66 (1989)
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[Publications] F.Nakamura,M.Taira,N.Hashimoto,H.Makino,N.Sasaki: "Familial type C syndrome of insulin resistance and short stature with possible autosmal dominant transmission" Endocrinolgia. 36. 349-358 (1989)
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[Publications] N.Hashimoto,M.Taira,Y.Suzuki,F.Shimada,H.Makino,S.Yoshida: "Defects of insulin receptor kinase in cells of normal insulin binding from women with familiar insulin resistant diabetes"
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[Publications] 平良真人,橋本尚武,島田典生,鈴木義史,金塚東,中村文子,蛯名洋介,牧野英一,吉田尚: "インスリン受容体遺伝子のrestriction fragment length polymorphism(RFLP)について" Peptide Hormones in Pancress. 9. 85-89 (1989)
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[Publications] 牧野英一,平良真人,橋本尚武,吉田尚,中村文子: "インスリン受容体異常症タイプC(千葉)、糖尿病学 1989" 診断と治療社, pp.126-148 (1989)
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[Publications] 牧野英一,平良真人,橋本尚武,島田典生,鈴木義史,蛯名洋介,吉田尚: "細胞内ドメインにチロシンキナ-ゼ活性をもつインスリン型受容体" 日本臨床, pp.167-172 (1989)