1988 Fiscal Year Annual Research Report
コラーゲン・シリコーン複合体による人工食道の実験的研究
Project/Area Number |
63570631
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
渡部 智 京都大学, 医用高分子研究センター, 助教授 (40167127)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 慶彦 京都大学, 医用高分子研究センター, 教授 (00027111)
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Keywords | 人工食道 / コラーゲン / シリコーンチューブ / 粘膜上皮再生 / 新生食道 |
Research Abstract |
我々の作製した人工食道は、ナイロンメッシュをシリコーンで被覆した筒の外側を乾燥コラーゲンで覆ったもので、直径2.5cm、長さ5cm、壁の厚さ1mm、およびコラーゲンの厚さは5mmである。雑種成犬を全身麻酔下に、頸部正中切開を行い気管と食道を分離した後、食道を5cm切除して人工食道で置換した。人工食道は3ー0 Prolene糸、または3ー0 Vicryl糸で単結節の端々吻合をおこない、術後はIVHを施行し、80Cal/kg/day、水分60ml/kg/dayで管理し、また、その後経口摂取を開始した。12頭に人工食道置換術を施行した。このうち3頭は麻酔あるいはIVHによる事故で術後2日目までに死亡し、1頭は縫合不全を起こしたため術後7日目に屠殺したが、これは人工食道置換術時に張力がかかり過ぎていた事が原因になったものと思われた。他の8頭は術後14日以上生存した。2頭は原因不明で死亡したが、他の6頭は17から36日目に屠殺した。各症例とも術後に縫合不全や感染の発生例はなかった。経口摂取は1頭づつ、各々術後15、21、32日目に開始した。経口摂取開始と共に人工食道は置換部位から脱落し、狭窄傾向が認められたが、21日以降に経口摂取を開始した犬では内腔は完全に食道粘膜で被覆され、新生食道が完成していた。経口摂取を行わずにIVHだけで管理した犬3頭では、3週間以上経過すれば新生食道が完成し、狭窄も認められなかった。我々の人工食道の特徴は、置換した人工食道が食道内に残存しないということである。シリコーンの外側をコラーゲンで被覆することにより食道上皮が早期に誘導され、上皮化が促進されたものと思われた。これによって5cmの食道置換部位が感染や縫合不全を伴うことなく、術後3〜4週間で完全に上皮化され、新生食道が完成することが示された。しかし、筋層が欠如するために内腔保持が不十分であり、新生食道の狭窄が生じたものと思われた。今後、新生食道の狭窄を回避することが課題である。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] 池修: 人工臓器. 18. 315-318 (1989)
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[Publications] Osamu Ike: Transactions of the Third World Biomaterials Congress 1988. 11. 143 (1988)
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[Publications] 清水慶彦: 医学のあゆみ. 145. 48 (1988)
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[Publications] 清水慶彦: Mebio. 5. 140-141 (1988)
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[Publications] 清水慶彦: 人工臓器. 18. 76-79 (1989)
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[Publications] 夏目徹: 人工臓器. 18. 72-75 (1989)
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[Publications] Satoshi Watanabe: "Application of Immobilized Enzymes for Biomaterials used in Surgery.,Immobilized Enzymes and Cells Part D,Methods in Enzymology,Volume 137" Academic Press,Inc., 545-551 (1988)
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[Publications] Satoshi Watanabe: "Surface Modification of Synthetic Polymer Materials for Medical Use:Addition of Fibrinolytic and Antibacterial Activities.,Implant Materials in Biofunction,Advances in Biomaterial" Elsevier Science Publishers B.V., 31-36 (1988)