1988 Fiscal Year Annual Research Report
消化器系癌患者とEBV感染ーEBV感染による免疫能の低下と予後
Project/Area Number |
63570650
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
横畠 徳行 帝京大学, 医学部, 講師 (50147089)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田島 朋子 帝京大学, 医学部, 助手 (90173145)
田島 マサ子 帝京大学, 医学部中検ウイルス部, 主任
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Keywords | 消化器系癌患者 / 単純ヘルペス / 水痘ー帯状ヘルペス / サイトメガロウイルス / EBウイルス / B細胞とT細胞機能 |
Research Abstract |
ヒトヘルペス科のウイルスは子供の時に感染し、ほとんどの成人は抗体保有者である。さらにヘルペス科のウイルスは感染後終生ヒトと共生関係を保ち長期にわたり潜在し、免疫抑制時に再活性化する事も知られている。これらヘルペス科のウイルスについて、抗体測定を行ない、消化器系癌患者と同年令層の健常者について比較検討した。 〔成績〕1)単純ヘルペス抗体価の保有は各年令層とも癌患者と健常者の間に差が見られなかった。水痘ー帯状疱疹ウイルスの抗体価は健常者より癌患者の方が低い抗体価を示した。サイトメガロウイルスは健常者より癌患者の方がやや高い傾向を示した。2)EBVの抗体価の保有率は癌患者は同年令層の健常者よりVCAの平均抗体価が4〜7倍高く、60歳以上の健常者に認められる抗体陰性者は皆無であった。さらにVCA抗体価の高い症例程、EBVの標的細胞であるB細胞の機能低下と成熟B細胞数の減少を末梢リンパ球で認めた。しかしT細胞ではVCA抗体価との関連性は認められなかった。またVCA抗体価は病期の進行に伴い高抗体価の保有率の上昇が認められた。次に手術におけるEBVの活性化については、術後に抗体価の上昇が認められたのは50%であった。3)EBV感染単核球細胞を排除する為の活性化T細胞は伝染性単核症に認められるのに対し、高VCA抗体保有の癌患者には認められなかった。さらに健常者の抗体保有例では感染細胞の免疫溶解(ADCC)の反応が起きるのに対し、癌患者ではあまり認められなかった。これらの事は癌患者ではウイルス感染B細胞の排除機構低下の可能性を示唆している。今後さらにEBV感性と患者の末梢リンパ球における、イムノグロブリンの産生能と特異的な抗体の産生について検討して行くことが、液性免疫能の低下について解析出来るのではないかと考えられた。
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