1989 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト肺癌の細胞生物学的特性にもとづいた転移能の診断に関する研究
Project/Area Number |
63570658
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
柴 光年 千葉大学, 医学部, 助手 (20162620)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山川 久美 千葉大学, 医学部, 助手 (80191211)
藤沢 武彦 千葉大学, 医学部, 助教授 (80110328)
山口 豊 千葉大学, 医学部, 教授 (80009448)
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Keywords | 転移 / 肺癌 / チミジンキナ-ゼ / 縮小手術 |
Research Abstract |
本年度は、肺癌手術例の切除材料を用いて、癌組織抽出液中のチミジンキナ-ゼ(TK)の酵素活性について生化学的に検索し肺癌の転移、再発との関連をみた。また、肺癌切除後の再発肺転移巣に対する治療法の確立をめざして、外科的切除の有効性を臨床例をもとに検討した。 1)TKはDNA合成系におけるサルベ-ジ経路の酵素である。これまでのわれわれの研究で、癌などの増殖性組織ではTKの2種のアイソザイム(細胞質型とミトコンドリア型)のうち細胞質型TKのみの活性が高いことが知られており、本酵素が腫瘍細胞の増殖能を反映し、ひいては癌の転移能の診断に役立つものと期待される。そこで肺癌の切除材料を用いて、TK活性と切除後の再発・転移について検索し本酵素の臨床的有用性について検討した。その結果、切除後1年以内に再発により癌死した症例のTK活性は1年以上生存例のそれよりも有意に高く、本酵素が癌の転移能の診断に有用であることが示唆された。さらに、われわれは本酵素の酵素学的性質を明らかにするために、エ-ルリッヒ腹水癌細胞を材料として本酵素を精製法を確立し本酵素に特異な性質を明らかにした。2)肺癌切除後の再発肺転移巣に対する治療法として、当施設では化学療法に加えて肺部分切除術あるいは肺区域切除術などの縮小手術を積極的に施行している。再発肺癌肺転移巣に対する外科治療の意義につき検討した。再切除が施行された9症例は、末梢型肺非小細胞癌、中分化型、NO症例で、腺癌6例、扁平上皮癌3例、再切除までの期間は5年以上のものが半数以上をしめていた。再切除后の3年生存率、5年生存率は共に60%と比較的良好で、特に再切除までの期間が長い方が成績は良好であった。以上より、再発高危険群の設定、肺転移巣の早期発見、早期治療により集学的に再発肺癌に対応していく事が成績向上のために必要と考えられた。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 由佐俊和,他: "肺癌治癒切除後の血行性転移にかかわる臨床病理学的因子に関する検討-腺癌と扁平上皮癌の相違について-" 肺癌. 30(1). 35-41 (1990)
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[Publications] 由佐俊和,他: "治癒切除後の再発に関する臨床的検討" 肺癌. 30. (1990)
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[Publications] 柴光年,他: "肺癌に対する縮小手術について" 胸部疾患学会誌. 28(2).