1990 Fiscal Year Annual Research Report
低酸素性肺血管収縮反応に対する各種血管拡張薬の影響の検討
Project/Area Number |
63570732
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
楳田 高士 近畿大学, 医学部, 助手 (10168750)
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Keywords | 肺循環 / HPV(低酸素性肺血管収縮反応) / エンドトキシン / イブプロフェン |
Research Abstract |
エンドトキシン血症は肺血管傷害を起こし、ARDSの原因となることはすでによく知られているが,その低酸素血症の原因にエンドトキシン(ET)による低酸素性肺血管収縮(HPV)の抑制が関与していることを昨年度の本研究で明らかにした。引き続き本年度ではETによるHPV抑制機序について検討を加えた。雑種成犬の左下葉肺分離換気標本を用い、左下葉肺血管の圧一流量曲線,下葉血流量およびPaO_2を指標にしてET10μg/kg投与によるHPV反応の変化を観察すると同時に,白血球,トロンボキサンB_2(TXB_2)および6ーKetoーPGF_<1α>の血中濃度を測定した。対照群ではET投与直後からHPVは完全に抑制されるが,経時的に回復した。末梢血中の白血球数はET投与によるHPV抑制の経過にやや遅れて減少および回復の経過を辿った。ET投与によりTXB_2は変化しなかったが,6ーKetoーPGF_<1α>は増加の傾向がみられた。これに対して、アラキドン酸のシクロオキシゲナ-ゼインヒビタ-であるイブプロフエン20μg/kgにより前処置後ET投与を行った群では、HPV反応の抑制は認められなかった。末梢血中の白血球数はイブプロフエン投与により増加し、その後ET投与により著明に減少した。TXB_2はイブプロフエンにより減少し、その後ET投与によっても変化しなかった。6ーKetoーPGF_<1α>はイブプロフエン投与によっても減少しなかったが、その後のET投与によっても変化を認めなかった。以上の結果から循環動態には変化を起こさない程度の少量のETをイヌに投与すると、肺血管内皮細胞に作用し血管拡張性プロスタグランジンであるプロスタサイクリンの産生あるいは遊離を増加しHPV反応を抑制するものと考えられた。しかし本研究で示された白血球の肺循環系へのトラッピングはETによる重要な作用であるが,HPV反応抑制には直接関連はないものと思われた。ETによるHPV抑制作用には活性化されたサイトカインを介するメディエタ-が考えられるが,詳細な機序の検討は今後の課題である。
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