1990 Fiscal Year Annual Research Report
成人T細胞白血病の母児感染防止に関する臨床的,疫学的研究
Project/Area Number |
63570781
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
江口 勝人 岡山大学, 医学部・附属病院, 講師 (10112145)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平松 祐司 岡山大学, 医学部・附属病院, 助手 (80218817)
|
Keywords | 成人T細胞白血病(ATL) / 母児感染 / 感染経路 / 家族調査 |
Research Abstract |
昭和63年度よりの通算で妊婦25150例でATLウイルス抗体が検査され,113例の(0.45%)が陽性と判定された。うち妊娠終了した例は108例であるが,妊婦検診の途中で転院して分娩施設不明例,岡山県で里帰り分娩し現住所へ帰った例,新生児死亡となった例などがあるためfollw up対象例は70例である。5例は現在妊娠中である。follw up対象例のなかにも定期検診に来院しない例もあり,以下の成績は協力の得られた症例についての結果である。 栄養法は64例中,完全人工乳53例,凍結母乳4例,加温母乳1例,もらい乳1例で64例中57例(89.1%)は感染防止のための栄養法を選択したが,64例中6例(9.4%)は通常の母乳栄養を選択した。 臍帯血中のATLウイルス抗体は検査された53例中すべて陽性であった。 出生後のfollow up成績は,生後12カ月以上経過した児は15例(うち母乳栄養3例)であり,いずれも抗体は陰性であった。 家系調査の結果は,まず対象児の同胞で母乳栄養され生後1年以上経過している児についてATLウイルス抗体を検査したところ、18例中5例(27.8%)で陽性であり感染が成立していると考えられた。 感染経路について妊婦,配偶者,母方父方祖父母について調査するとATL多発地域出身家系が74例中40例(54.1%),白血病家系が2例,供血歴がある妊婦が2例,家族に供血歴が1例,前述のいずれもない家系が29例(39.2%)であった。従来,配偶者感染は夫から妻への感染が主で,妻から夫への感染はないとされている。抗体陽性妊婦の配偶者(夫)について検査すると,43例中7例(16.3%)がATLウイルス抗体陽性であった。7例中配偶者(夫)の家系のみがATL多発地域である例が3例で,逆に妊婦の家系のみがATL多発地域である例が3例あった。家族全体の詳細な抗体検査は困難であるが,この結果は妻から夫への感染の可能性を示唆する結果である。
|
-
[Publications] 関場 香: "岡山県およびその周辺地域におけるATLA抗体陽性妊婦の実態と母児感染に関する研究" 産婦人科の世界. 39. 917-921 (1987)
-
[Publications] 江口 勝人: "ATLウイルスの母子感染" 岡山県母性衛生. 5. 24-25 (1988)
-
[Publications] 国富 泰二: "HTLVーI非流行地での母児感染防止とキャリァ妊婦の父母の出身地" 日本医事新報. 3349. 33-34 (1988)
-
[Publications] 滝川 弘敏: "HTLVーI非流行地での岡山県における母児感染についての検討" HTLVーI母児感染研究論文集. 1. 45-48 (1988)