1989 Fiscal Year Annual Research Report
組織培養による重金属のヒト気道に及ぼす影響に関する研究
Project/Area Number |
63570804
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
洲崎 春海 東京大学, 医学部(病), 助手 (70110715)
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Keywords | 重金属 / 気道組織 / 組織培養 |
Research Abstract |
気道組織とクロムなどの重金属の反応機序を、よりin vivoに近い反応条件下でin vitroでの解析を行うために、組織培養を用いて気道組織の気道内腔面側にのみ重金属を反応させる実験系を確立することを目的として以下の検討を行った。5週齢のハ-トレ-系モルモットをネンブタ-ル麻酔下に開腹し、腹部大動脈を切断、失血死させ、鼻中隔粘膜と気管を採取した。各々の組織の小片を線毛上皮面が上になるように、その反対側をデイッシュ内に作製したコラ-ゲン・ゲル・マトリックス(Cellmatrix^<(R)>TypeI-A)上に接着させ、37℃、5%CO_2の条件で培養した。培養液としてはPenicillin-G(200unit/ml)、Streptomycin sulfate(200μg/ml)が含まれた10%FBS添加Eagle's MEM液を使用した。コラ-ゲン・ゲル・マトリックスの再構成用緩衝液として2.2%NaHCO_3および200mM HEPESを含む0.05N NaOH溶液を使用したものをI群、200mM HEPESを含む0.08N NaOH溶液を使用したものをII群として、両群のコラ-ゲン・ゲル上培養の経過を検討した。培養後の組織の接着はI群での培養の方が良好であった。組織よりの線毛上皮細胞やfibroblastのコラ-ゲン・ゲルへの遊出・定着は鼻粘膜ではI群で培養3日目で著明となり、8日目では組織全周に認められたが、II群では8日目でも部分的に認められるのみであった。両群とも遊出した線毛上皮細胞や組織辺縁に活発な線毛運動が観察された。これらの線毛打数を培養経過にしたがって測定した。気管では線毛上皮細胞やfibroblastの遊出、定着が培養5日目にI群で組織全周に認められたが、II群では8日目でも認められなかった。培養経過中の培養組織の病理組織変化に関しては現在詳細に検討中であるが、I群のコラ-ゲン・ゲル上組織培養法により目的とした気道組織と重金属との反応の実験系ができると考える。今後、この実験系により重金属との反応機序の解析、ヒト組織を用いた検討を行う。
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