1988 Fiscal Year Annual Research Report
パピローマウイルスの口腔癌における病因的意義の分子生物学的解析
Project/Area Number |
63570844
|
Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
高木 実 東京医科歯科大学, 歯学部, 助教授 (30014012)
|
Keywords | ヒトパピローマウイルス / 口腔癌 |
Research Abstract |
口腔癌の発生におけるヒトパピローマウイルス(HPV)の病因的意義の解析を行ない次のような研究成果を得た。パピロースウイルス共通抗原に対する抗体を用いて免疫組織化学的検索を553例について行なったところ乳頭腫の73例中の2例(2.8%)、白板症の155例中の1例(0.6%)に陽性所見を得たが、扁平上皮癌181例、乳頭状増殖56例、疣贅状癌6例、異型上皮5例、過角化症15例、扁平苔癬7例、エプリース27例、正常上皮10例などはいずれも陰性であった。これは用いた抗体がウイルスのL遺伝子蛋白に対するものなので、組込まれたものやコピー数の少ないものでは認識できていない可能性が残されている。光学顕微鏡の所見ではコイロサイトーシスが子宮頚部粘膜上皮ではHPVの感染に特異的にみられるとされている。口腔病変について乳頭腫23例、白板症241例、扁平上皮癌310例について検討したが、コイロサイトーシスは免疫組織化学的にウイルス粒子のない所にもみられ、口腔粘膜上皮ではHPVの感染に起因する特異的な所見とは考えられなかった。Southern Hybridizationを29例について行なった。症例は口腔扁平上皮癌22例、白板症1例、疣贅状増殖1例、多形性腺腫3例、粘表皮腫1例、悪性黒色腫1例である。外科手術や剖検材料からDNAを採取してHPV6、11、16、18をプローブとして検索を行なった。舌癌の1剖検例で原発巣は放射線治療で治癒したが、全身転移で死亡した症例で、転移巣は皮膚、喉頭、副腎について調べ、皮膚転移巣で陽性であった。制限酵素による切断後のバンドのパターンから定型的なHPV16でなく、新しいタイプのHPVと考えられ、クローニングを行なったが、採取出来たDNA量が少なかった為残念ながらクローニングには成功しなかった。何故皮膚転移巣のみにみられたか検討中である。口腔扁平上皮癌由来の6細胞株についても同様のプローブで検索したが、いずれの株とも陰性であった。
|
Research Products
(1 results)