1988 Fiscal Year Annual Research Report
歯胚基底膜の形態と機能に関する免疫電顕組織細胞化学的研究
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63570854
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Research Institution | Tokyo Dental College |
Principal Investigator |
澤田 隆 東京歯科大学, 歯学部, 講師 (60125010)
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Keywords | ラット切歯 / 歯胚基底膜 / 免疫組織細胞化学 / 透過型電子顕微鏡 / ラミニン / IV型コラーゲン |
Research Abstract |
本研究は免疫組織化学的手法を用いて歯胚基底膜構成成分の組成とその局在、ならびにこれの代謝について検索し、基底膜の歯牙形成における意義を明らかにすることを目的とする。 本年度は内琺瑯上皮基底膜に付随する線維層に焦点を絞り、その組成と形成機序について検索した。ラット切歯を4%PLPで灌流固定の後、EDTAで脱灰し、6μmの凍結切片とした。切歯は抗ラミニン抗体、抗IV型コラーゲン抗体を用い酵素抗体法間接法を施し、電子顕微鏡で観察した。 ラット切歯では、基底膜は内琺瑯上皮と分化期琺瑯芽細胞、及び外琺瑯上皮と乳頭層細胞に存在し、それぞれ歯乳頭と歯嚢とを分界している。この基底膜は中等度の電子、密度を持つ幅約30nmの暗帯と、電子密度の低い幅約40nmの明帯より構成されている。さらに内琺瑯上皮では暗帯から細線維が歯乳頭に向けてほぼ垂直に放射されている。しかしサルの材料で観察されたものと比べ、その発育はきわめて低調である。ラミニンとIV型コラーゲンは共に上記の歯胚基底膜に分布局在しているが、その反応程度には部位的な相違が認められる。即ち、反応の最も強いのは乳頭層細胞の基底膜で、つぎに強いのは、より発育端寄りの外琺瑯上皮と内琺瑯上皮の基底膜であり、そして、分化期琺瑯芽細胞で反応の最も弱い傾向が窺える。反応産物は、基底膜の暗帯に特に強く認められるほか、内琺瑯上皮の暗帯に付随する細線維にも観察される。そのほか、暗帯に面した細胞膜と、被覆小窩や小胞に、さらに発育端寄りに位置する外琺瑯上皮の粗面小胞体と核周囲腔にも反応産物がしばしば認められる。 以上より、ラット切歯歯胚の基底膜暗帯と、これに付随する細線維にラミニンとIV型コラーゲンが共に存在すること、その合成には発育端寄りに位置する外琺瑯上皮が関与していることが示唆される(結合組織;20、62、1988)。
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