矯正診断に際しての視覚による情報獲得行動に関する研究

1988 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 63570967
• Research Institution: Ohu University
• Principal Investigator: 山口 敏雄 東北歯科大学, 歯科矯正学講座, 教授 (90083469)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 氷室 利彦 東北歯科大学, 歯科矯正学講座, 講師 (30137666)
• Keywords: 眼球運動 / 情報獲得行動 / アイカメラ / 学部教育 / 探索方略 / 習熟度 / 注視点 / 矯正診断

Research Abstract

本研究は、臨床経験が矯正診断にどの様に寄与しているかを明らかにすることを目的とし、学部教育終了者と学部教育未経験者の視覚的な情報獲得行動を比較した。被験者は学部教育終了者群として専門課程4年生30名、学部教育未経験者群として進学課程1年生30名とした。実験装験として注視点解析システムを用い、以下の実験を行い、両群を比較検討した。〔実験1〕被験者に同一患者の口腔内写真3枚とパノラマX線写真1枚を順にそれぞれ30秒間呈示し、眼球運動を各々1回記録した。0.2秒以上の停留点を注視点とし、部位別注視点数、跳躍性眼球運動数、注視点連絡数について両群で比較した。〔実験2〕眼球運動記録後、実験1で呈示した症例に関して、探索部位について内省報告を実施した。〔実験3〕実験1の患者の口腔模型を含む模型(10症例)の中から、当該症例の模型を選択するように指示した。〔結果〕実験1において学部教育終了者群は学部教育未経験者群と比較して、部位別注視点数は重要な特徴部位で多かった。跳躍性眼球運動は少なかった。注視点連絡数は重要な特徴部位間で多かった。以上より、学部教育終了者群の方が、細部にわたり効率よく特徴部位を的確に探索していたことが分かった。実験2では、部位別注視点数、注視点連絡数から得た探索部位と内省報告の結果が一致しており、実験1を裏付ける結果を示していた。実験3の正答率は、学部教育終了者群では100%、学部教育未経験者群では70%であり、選択理由から学部教育終了者群が詳細に探索していたことが分かった。しかし、平均選択時間には両群間で差は認められなかった。〔結論〕専門教育を受けた被験者は、特定の領域を選択的に保索していたことが明らかであった。したがって、探索方略が経験的な習熟度に大きく関与するものと考えられる。今後は、個人レベルの分析を進めるとともに、頭部X線規格写真探索時について検討する予定である。