1989 Fiscal Year Annual Research Report
安定アシル酵素の生成を機作するβーラクタマ-ゼ阻害剤の設計
Project/Area Number |
63570978
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
谷沢 和隆 北海道大学, 薬学部, 助教授 (90001049)
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Keywords | ラクタマ-ゼ / 阻害剤 / アシル酵素 / ニトロソラクタム / ジケテン誘導体 / 逆性基質 |
Research Abstract |
ニトロソラクタム環の開裂が起こると、これが引き金となり化学的に活性なカルボニウムイオンを生じることが知られている。この事実を利用してキモトリプシンをアルキル化し不可逆的な阻害に導く“自殺基質"のデザインが報告されている。本年度の研究は、アシル酵素の生成から更に進めた手法としてこの原理を活用した阻害剤の検討をおこなった。即ち、ニトリソ-β-ラクタム誘導体は基質類似物質としてβ-ラクタマ-ゼに特異的に作用し、アシル酵素を形成し、続いて生じるカルボニウムイオンにより酵素が修飾されることが期待される。 本年度にはα-フェニル-β-ラクタムとβ-フェニル-β-ラクタムのニトロソ誘導体を合成し、両化合物の阻害剤としての性質を検討した。β-フェニル誘導体から得られるニトロソ化合物は、ラクタマ-ゼに対する特異性および反応性が高く、強い阻害効果が結論された。酵素に対する特異性物質であるセファロスポリンの共存によりこの阻害反応が妨げられることから、活性中心指向性の、予測どうりの阻害機構を持つことが明らかとなった。また、このニトロソラクタムは、代表的β-ラクタマ-ゼ阻害剤であるクラブラン酸に比べ遜色のないことも確認した。一方、α-フェニル誘導体は一過性の阻害を示すが酵素は直ちに活性を回復することを見いだした。これは、アシル酵素を形成しても、生成するカルボニウムイオンは酵素と共有結合を結ぶ前に消滅することを意味している。フェニル基の位置の相違が活性中心内の試薬の配向を規制し、阻害効果を左右するなど試薬のデザイン上の重要知見となった。
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Research Products
(1 results)