1988 Fiscal Year Annual Research Report
ヨードシクロカルバメーションによる鎖状の系での立体制御
Project/Area Number |
63570983
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小林 進 東京大学, 薬学部, 助教授 (70101102)
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Keywords | ヨードシクロカルバメーション / アリルアミン / アミノアルコール |
Research Abstract |
ヨードシクロカルバメーション反応は,ベンジルオキシカルボニル基等で保護されたアリルアミン,ホモアリルアミン誘導体にヨウ素を作用させると,"保護基"であるカルバメートが求核的に攻撃し,酸化的に閉環する反応である。われわれは,アミノアルコールを与える本反応を鎖状の系での立体化学の制御に展開し,ネガマインシ,ベスタチン,6ーエピ-パプロサミンBなどの生理活性物質の合成に応用し,本反応の有用性を示してきた。本反応は分子内反応であるため,反応の遷移状態は基質の構造により制限をうける。そこで,本研究ではカルバメート窒素原始上の置換基の有無,二重結合のシス,トランスの組合せを系統的に変え,立体選択性,位置選択性がどのように変化するかを明らかにすることを目的とした。この2つのパラメーターを変え,アラニン,バリンより4タイプ,計8個のアリルアミン誘導体を調整し,ヨウ素との反応を行った。シスオレフィンの場合は窒素原子上の置換基の有無にかかわらず,トランス型5員環カルバメートが単一生成物として得られることを明らかにした。この高い選択性は類似するハロラクトン化反応,あるいは他の分子内環化反応の結果ともよく一致する。トランスオレフィンの場合は,窒素原子上に置換基が存在するとトランス型5員環カルバメートが優先して生成するが,選択性はα位の置換基の大きさに依存することを示した。一方,窒素原子上に置換基がないと,予期に反して6員環カルバメートが主生成物として得られることが明らかになった。このような位置選択性の逆転はハロラクトン化反などでは知られておらず,窒素原子を含むヨードシクロカルバメーション反応特有の興味ある結果が得られたものと考えられる。この現象は電子吸引性の窒素原子によるカチオンの不安定化と遷移状態での立体反発によって定性的に説明することができる。
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