1988 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
63571014
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Research Institution | Osaka University of Pharmaceutical Sciences |
Principal Investigator |
三野 芳紀 大阪薬科大学, 薬学部, 講師 (60125119)
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Keywords | ムギネ酸 / シデロホア / 鉄取り込み / イネ科植物 / 調節機構 / アベニン酸 |
Research Abstract |
我々は、イネ科植物の鉄取り込みがムギネ酸等の植物シデロホアを介して行なわれていることを報告し、ムギネ酸金属錯体のユニークな性質等についても詳細な研究を進めてきた。その中で特に興味深いのは、ムギネ酸の培養液への添加は、イネの鉄取り込みとクロロフィル合成を促進するのに対し、ムギネ酸より安定な水溶性鉄錯体を形成するEDTAあるいはデスフェリオキサミンは、それらの活性をまったく示さないという事実である。この原因として、植物の根の生体膜に、ムギネ酸-鉄錯体の分子構造を認識する機構の存在が考えられる。この点を明らかにするために、天然の植物シデロホア(L体)のエナンチオマー(D体)を合成し、それらの鉄取り込み活性について比較検討した。 代表的な植物シデロホアであるムギネ酸は合成上困難な点が多いのでエンバク由来のシデロホアであるアベニン酸、天然には未だ見い出されてないが、その構造から類似の活性が期待されるデオキシデイステイコン酸について、両者のL及びD体の合成を試みた。その結果、水素化シアノホウ素ナトリウムによるシッフ塩基の形成反応を利用することによって、それらの合成に初めて成功した。 これらのシデロホアを用いてイネの鉄取り込み活性(^<59>Fe)を比較したところ、D.L体両者共互いに鏡像体である以外は、同じ性質の錯体を形成するにもかかわらず、D体は天然のL体に比べて明らかに低い活性しか示さなかった。従って、植物の根には植物シデロホアの分子構造を厳密に認識する機能(レセプタータンパクの関与)がそなわっており、鉄欠乏時には根からのムギネ酸の分泌と同時に、レセプタータンパクが根の膜に動員されることによって、鉄の選択的取り込みが行われていることが強く示唆された。
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