1988 Fiscal Year Annual Research Report
新しい5'-ヌクレオチドホスホジエステラーゼの精製と生理的意義及び癌との関連
Project/Area Number |
63571034
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 日出夫 東京大学, 応用微生物研究所, 助教授 (50013321)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西村 敏男 東京大学, 応用微生物研究所, 講師 (10013327)
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Keywords | 5'-ヌクレオチドホスホジエステラーゼ / アルカリホスファターゼ / 癌細胞 |
Research Abstract |
癌細胞に出現している新しい種類の5'-ヌクレオチドホスホジエステラーゼの性状を調べている過程で新しい分子種のアルカリホスファターゼが癌細胞に出現していることを見出した。両酵素は近縁関係にある酵素なので,新しい両酵素の性状を同時に調べた。ヒトやマウス由来の15種類の癌細胞株を調べた結果,ホスホジエステラーゼでは13株のものが,またホスファターゼでは10株のものがN-エチルマレイミド(NEM)によって阻害され(NEM感受性),ジチオスレイトール(DTT)によって活性化されこれらは共にSH酵素であることが分かった。一方,正常組織からの両酵素はNEMによって影響を受けずDTTによって阻害された(DTT感受性)。癌細胞15株のうち1株のみが両酵素ともDTT感受性であった。ヒト肝癌PLC/PRF/5細胞株は両酵素ともNEM感受性とDTT感受性の両方の活性を有していたので,細胞成分を分画しその局在性を調べたところ,両酵素とも正常細胞型であるDTT感受性酵素は細胞膜上に存在し従来の報告と同様であったが,多くの癌細胞に存在し新しい型であるNEM感受性酵素は細胞質の可溶性画分に存在することが分かった。ゲル濾過法で分子量を調べたところ,可溶性画分に存在する両酵素とも細胞質膜に存在する従来知られているものに較べて小さいことが分かった。以上のことから,多くの癌細胞では,細胞膜上の5'-ヌクレオチドホスホジエステラーゼおよびアルカリホスファターゼが消失し,細胞質の可溶性画分に新しい分子種の両酵素が出現していることが分かった。その生理的意義は不明であり,今後の興味ある課題である。
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Research Products
(1 results)