1988 Fiscal Year Annual Research Report
発癌プロモーターによる遺伝子発現変動連鎖の分子生物学的研究
Project/Area Number |
63571037
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野瀬 清 東京大学, 医科学研究所, 助教授 (70012747)
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Keywords | 発癌プロモーター / 遺伝子クローニング / 細胞増殖 / 転写制御 |
Research Abstract |
発癌プロモーターTPAは細胞内遺伝子発現の変化を誘起し,発癌の促進を行なう。この分子機構を明らかにするため,TPA処理したマウス骨芽細胞からcDNAライブラリーを作製し,TPAにより発現の誘導される遺伝子のクローニングを行った。スクリニングの結果,8個の遺伝子が分離され,塩基配列決定により,このうち3個はメタロチオネイン,1個はオステオポンチン,残り4個は未知の遺伝子であることが判明した。こられの遺伝子の発現は,TPA処理後4〜8時間で最大となり,刺激後直ちに発現が誘導されるc-fos,c-mycなどの遺伝子発現に引き続いて起こる。また,いずれの遺伝子のTPAによる誘導には,C-キナーゼの活性化を必要とした。 分離した遺伝子の発現様式を,マウスの各種臓器で比較したところ,OTS-2は全ての臓器で発現が見られたのに対し,OTS-5は腎,骨で発現が高く,OTS-7は腎,肺で比較的強く発現しており,OTS-8は肺でのみ発現が見られた。以上のように発現に臓器特異性の存在することは,これらの遺伝子の機能を反映していると考えられる。また,培養細胞の増殖との関連を推定するため,増殖期と静止期の細胞における発現を比較した。分離した新規の遺伝子の発現は,いずれも増殖期の細胞で静止期の細胞と比べより強く誘導された。従って,これらの遺伝子は何らかの形で細胞増殖に関与すると期待される。 TPAにより初期に発現するc-fosとの相関を調べるため,人工的に誘導されるc-fos遺伝子を導入した細胞を作製して解析した結果,OTS-5の発現にはc-fosが負の制御を与えていることが示唆された。 新しく分離された遺伝子の増殖,癌化における役割を明らかにするためには,今後これらの遺伝子の発現ベクター,遺伝子産物に対する抗体の作製などの研究を推める必要があると考えている。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Shibanuma,M.: J.Cellular Physiology. 136. 379-383 (1988)
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[Publications] Shibanuma,M.: Oncogene. 3. 17-21 (1988)
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[Publications] Huang.M: Molecular Carcinogenesis. 1. 109-115 (1988)
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[Publications] 野瀬清: 細胞工学. 7. 678-685 (1988)