1988 Fiscal Year Annual Research Report
生体に於ける脂質過酸化に起因した薬物毒性の定量的解析と毒性発現予測システムの開発
Project/Area Number |
63571061
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
堀江 利治 東京薬科大学, 薬学部, 講師 (90120154)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 正弘 東京薬科大学, 薬学部, 助教授 (20012669)
粟津 荘司 東京薬科大学, 薬学部, 教授 (60012621)
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Keywords | 薬物毒性 / 脂質過酸化 / グルタチオン / アセトアミノフェン / 肝ミクロゾーム / 蛍光性物質 / 蛍光寿命 |
Research Abstract |
脂質過酸化が重要な薬物毒性因子となりうる可能性をin vivo で立証し、更に脂質過酸化によって膜中に生成する蛍光性物質の特性を明かにすることにより、生体内での脂質過酸化発現の評価方法の基礎を確立した。1.薬物として解熱鎮痛薬アセトアミノフェンをラットに経口投与し、肝毒性の発現を血液中G.O.T.の増大で確認した。チオバルビツール酸反応物質は肝ホモジネート中で、コントロールラットにくらべて僅かではあるが増大し、脂質過酸化の発現を示唆した。2.血液中、組織中のグルタチオンを定量するために、科学研究費補助金で購入した高速液体クロマトグラフィーを利用し、蛍光色素オルトフタルアルデヒドを用いたポストラベル法による高感度定量法を確立した。3.ジエチルマレイン酸をラット腹腔内に投与し、アセトアミノフェンを投与した後で肝ミクロゾーム膜を調製し、その蛍光測定を行なうと、脂質過酸化に由来する蛍光性物質を検出することができた。このことは、アセトアミノフェン肝毒性が発現する場合には、同時に脂質過酸化が発現している可能性を示唆しており、またin vivoでの脂質過酸化の発現は、体内グルタチオンレベルの低下によって顕著になることがわかった。4.蛍光性物質の特性をラット肝ミクロゾームを用い、in vitroで調べた。この蛍光性物質の蛍光異方性は、脂質過酸化の進行とともに増大した。肝ミクロゾームの膜、蛋白、脂質中の蛍光性物質の蛍光寿命を測定した。いずれも蛍光寿命は3成分から成り、各寿命値も膜、蛋白、脂質で各々類似していた。これは脂質過酸化反応時間に依存しなかった。このことは蛍光性物質が脂質過酸化反応の進行とともに量的に増加することを示しており、蛍光性物質はin vivoでの脂質過酸化発現を検出するための優れた指標であることが確認された。今後、薬物毒性における脂質過酸化の関与を体内グルタチオンの変動と対比し、定量的に解析していく。
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