1988 Fiscal Year Annual Research Report
病態時の薬物動態異常の実験的解析:糖尿病時の薬物動態
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63571097
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
木村 聰城郎 岡山大学, 薬学部, 教授 (10025710)
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Keywords | 糖尿病 / streptozotocin / 薬物吸収 / 血漿たん白結合 |
Research Abstract |
糖尿病時の薬物動態変化を解析することを目的として、streptozotocin誘発糖尿病ラットを用いて本年度は吸収過程ど血液中での存在状態について検討を行い、以下の結果を得た。 1)吸収特性の異なる各種モデル薬物についてin situループ法により小腸からの吸収速度を測定したところ、糖尿病時には親油性の低い難吸収性薬物も親油性の高い易吸収性薬物も共に吸収が有意に増大しており、能動輸送が関与するcyclacillinの吸収についても増大が認められた。 2)FITC-dextranの吸着量により小腸粘膜表面積の変化を調べたところ、糖尿病時に著しく増大しており、薬物吸収増大の一因と考えられる。 3)Mannitolを用いて小腸刷子縁膜小胞(BBmV)の透過性を検討したところ糖尿病時に透過性が上昇していることが明らかとなった。また、蛍光偏光法による検討からBBmVの膜流動性が上昇していることも明らかとなり表面積の増大と膜透過性の上昇が吸収増大の原因と思われる。 4)担体輸送系の変化は速度論的解析の結果、担体の性質には変化がないが、担体の量が増加して輸送能が増大することが示唆された。 5)吸収以後の動態の変化を解析する目的でtolbutamideとprocainamideについて投与後の血漿中の濃度を比較検討したところ、いずれについても糖尿病時に血漿中からの消失が著しく速くなることが認められた。 6)薬物の血液中での存在状態の変化について検討を行ったところ、糖尿病時にはtolbutamideの血漿たん白との結合およびアルブミン濃度は低下し、血漿量も著しく減少することが明らかになった。従って、特にたん白結合率の大きな薬物は遊離形薬物の血漿中濃度が上昇する割合が大きく、体内動態に著しい変化があるものと推察される。 なお、本年度購入した小型冷却遠心器はBBmVを用いた実験など温度上昇が好ましくない実験に極めて有用があった。
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