1989 Fiscal Year Annual Research Report
アミノ-カルボニル反応を用いた食品酵素の熱安定性に関する研究
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63580076
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Research Institution | Tokaigakuen Women's College |
Principal Investigator |
加藤 保子 東海学園女子短期大学, 家政学科, 教授 (10082356)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 良 名古屋大学, 農学部, 教授 (70023398)
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Keywords | アミノ・カルボニル反応 / メイラ-ド反応 / トリプシン / トリプシンー糖複合体 / 熱安定性 |
Research Abstract |
Ovalbuminと各種還元性二糖(maltose,cellobiose,isomaltose,lactose melibiose)の混合凍結乾燥物を50℃65%RHの下で貯蔵し、Aminoーcarbonyl反応(AーC反応)の各段階生成物を調整した。これらの二糖ーovalbumin系の反応性を比較したところ、isomaltose,melibiose系は他の二糖の系に比べて反応が速く、glucoseーovalbumin系と同程度であった。一方、maltose,cellobiose,lactose系の反応性は遅く、特にmaltose系はAーC反応の初期段階に長く留まるものであった。 これらの知見をもとに、trypsinーglucose複合体を上記同様に調整し合成基質(BzーArgーpーNA)を用いてnativeなtrypsin活性と比較し、次の結果を得た。trypsinーglucose複合体は貯蔵8日迄nativeなtrypsinより酵素反応性は高く、かつ60℃における反応性は約2倍、70℃では2.5倍に増加した。示差走査熱量計による変性温度も3℃上昇したように、glucoseの付与によってtrypsinの変性温度を高めたものであった。また、nativeなtrypsinのKm値0.932に対してtrypsinーglucose複合体のKm値0.932に対してtrypsinーglucose複合体のKm値は、0.428であった。この事実は、酵素に糖を付与すると基質との親和性を高めるといえよう。 Typsinーmaltose複合体を調整してtrypsinーglucose複合体の諸性質と比較検討した。この複合体のKm値、至適pHはtrypsinーglucose複合体と同じであった。更に長期間貯蔵しても安定したものであった。trypsinーmaltose複合体はAーC反応の初期段階生成物として長く留まり、重合化、褐変化反応が生じにいことが安定化の要因であると考察した。基質としてcaseinを用いた場合にもtrypsinーglucose複合体の酵素活性はnativeなtrypsinより高かった。糖の付与によってtrypsinの熱安定性及び酵素活性を著しく高めるという結果から、AーC反応の初期段階に留める糖を有効に活用すれば、食品酵素の利用性も高まるとの知見を得た。
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