1989 Fiscal Year Annual Research Report
ラットの培養肝細胞が分泌する細胞増殖阻害因子の構造と機能
Project/Area Number |
63580123
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
宮崎 香 横浜市立大学, 木原生物学研究所, 助教授 (70112068)
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Keywords | 増殖阻害因子 / 増殖因子 / 動物細胞 / 細胞培養 / 増殖調節 / 癌 / 精製 / 肝細胞 |
Research Abstract |
正常ラットの肝臓由来の上皮性細胞株BRLと、その腫瘍性形質転換細胞株RSV-BRLを標的細胞として種々の生体材料に存在する増殖阻害因子を検索した結果、BRLとRSV-BRL自身が数種の増殖阻害因子を分泌することを見い出した。BRLの培養液からは3種類の増殖阻害因子(分子量56k、21k、<10k)を精製し、その性質については既に報告した。本年度は、主としてRSV-BRLが分泌する増殖阻害因子について検討した。RSV-BRLは、酸や熱に安定な増殖阻害因子(GI-1)と酸に不安定な増殖阻害因子(GI-2)を培養液中に分泌した。細胞外に分泌されたGI-1は、120k、30k、13kの3種のサブユニットからなる、不活性な複合体(全体の分子量300k-700k)を形成しており、酸処理や尿素処理によって活性分子を遊離した。活性方のGI-1は分子量13kのアブユニットのホモダイマ-であり、pl8.2とpl7.9の少なくとも2種類の分子が存在することが分かった。このpl8.2の因子の部分的な一次構造を解析した結果、この因子がTGF-β1であると考えられた。GI-1は、1ng/ml以下の濃度で正常にBRLに対して強い増殖阻害因子活性を示したが、RSV-BRLや多くのヒト癌細胞に対しては非常に弱い活性しか示さなかった。一方、GI-2は酸や熱に対して不安定で還元剤に対しては安定な蛋白質で、分子篩クロマトグラフィにおいて10k-40kの位置に溶出した。GI-2は、GI-1と同様にRSV-BRLに比べてBRLの増殖を強く阻害した。癌細胞がこららの増殖阻害因子を分泌するのは一見意外であるが、それらの標的細胞に対する選択性は極めて合目的である。以上の結果とは別に、兎の血清中に2種類の増殖阻害因子が存在することを見いだし、それらの精製を試みた。その結果、一方はTGF-βの一種であり、他方は以上の増殖阻害因子とは全く異なり、正常細胞に比べて癌細胞の増殖を選択的に阻害する分子量60k-70kの、酸、熱、変性剤に対して不安定な増殖阻害因子であることが分かっている。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] K.Mashima: "Multiple forms of growth inhibitors secreted from cultured rat liver cells: purification and characterization." J.Biochem.103. 1020-1026 (1988)
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[Publications] K.Miyazaki: "Characterization of fibronectin-hydrolyzing metallo-proteinase secreted from virally transformed rat liver cell line RSV-BRL." Intracellular Protein Catabilism Japan Scientific Societies Press,Tokyo. 559-565 (1989)
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[Publications] K.Miyazaki: "Growth inhibitors-molecular diversity and roles in cell proliferation." In Vitro Cill.Develop.Biol.25. 866-872 (1989)
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[Publications] K.Miyazaki: "Potent growth inhibition of human tumor cells in cuilture by arginine deiminase purified from culture medium of mycoplasma-infccted cell line." Cancer Res.(1990)
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[Publications] 宮崎香: "増殖阻害因子の分子的多様性と生理活性-特に血清中の増殖阻害因子とラットの形質転換細胞RSV-BRLが分泌する増殖阻害因子について-" Biotherapy. 2. 285-291 (1988)
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[Publications] 宮崎香: "ウサギの血清中に存在する腫瘍細胞増殖阻害因子" Human Cell(印刷中). 3. (1990)
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[Publications] 宮崎香: "上皮細胞「無血清細胞マニュアル」(大野忠夫他編)" 講談社, 248( p.89-104) (1989)
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[Publications] 宮崎香: "血液中に存在する増殖阻害因子と細胞増殖のネガティブ制御機構.「新しいサイトカイン」(今西二郎編)" 金芳堂, 171( p.31-47) (1990)