1989 Fiscal Year Annual Research Report
培養細胞の放射線致死および潜在致死回復におよぼすプロスタグランジンの影響
Project/Area Number |
63580161
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 捷三 東京大学, 医科学研究所, 助手 (30012743)
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Keywords | プロスタグランジン / インドメタシン / 潜在的致死回復 |
Research Abstract |
〔はじめに〕プロスタグランジン(PG)は膜リン脂質の多価不飽和脂肪酸を前駆体とし、生体の各所で産生され、生理的、薬理的作用などを有している。PGは放射線などによるラジカルによっても、その産生が促進されることや、その処理により、細胞内cAMPやGSHの量が変化することなどから、細胞、組織、個体の放射線感受性に何んらかの影響を与えている。昨年度まではPGE_1、PGD_2のヒト繊維芽細胞のPLD回復におよぼす影響を調べた。今年度はさらに、PGA_1、PGA_2についても調べると共に、PG合成阻害剤であるインドメタシンの腫瘍細胞に及ぼす影響も調べた。 〔材料と方法〕ヒト繊維芽細胞をプラト-期までαMEMで培養し、照射1時間前に培養液に加えた。X線5Gy照射後、コロニ-法により、致死および潜在致死回復を求めた。インドメタシンの影響はマウス固形腫瘍(OFSa)を用いた。35Mg/mlインドメタシンを飲料水として、10〜12日間連続投与し、中性子8〜12Gy照射して、TCD_<50>を求めた。 〔結果と考察〕PGA_1、PGA_2の放射線致死および潜在致死回復におよぼす影響はPGD_2、PGE_1、PGE_2の様相とは異なっていた。すなわち、PGA_1、PGA_2、PGD_2と同様、放射線と併用しなくとも細胞致死効果はあるが、PGD_2のそれよりも、同一濃度では大きかった。PGのみでは影響のない濃度で放射線致死を比較すると、PGA_1、PGA_2共に併用効果を示した。しかし、この濃度での潜在致死回復への影響はいずれも抑制する傾向にあるが、有意差は見られなかった。次に、インドメタシンのマウス腫瘍に及ぼす影響を調べた。今回使用したインドメタシン濃度(35μg/ml)ではOFSaの増殖を遅延させた。またこの濃度におけるOFSaの中性子によるTCD_<50>からのDMFは約1.1であった。今後、X線によるDMFを求める必要がある。またいずれの場合も薬剤の投与量に改善の余地がある。
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