1988 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
63580211
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
猪飼 篤 東京大学, 理学部, 助教授 (50011713)
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Keywords | 分子素子 / 生体分子素子 / タンパク質の高次構造 / 集積素子 / 脂肪酸合成酵素 |
Research Abstract |
分子レベルにおける人間の設計を実現し,分子素子を設計の意図通りに作動させる事を目的として本研究では生体内に存在する複合分子素子の最も完成された形を持つ脂肪酸合成酵素についてその設計と動作原理を究明した。この結果をもって複合機能を持つタンパク質を基盤とする分子素子の設計原理を解明する。本年度の研究では7積の活性中心を合わせ持つ脂肪酸合成酵素の中で基質が約50回の触媒反応を受けて産物となる間,触媒素子である酵素がどのような大きさを持つ動きをするか,その動きを可能にする設計上の原理は何かという点について研究し次の結果を得た。 まず本酵素の動的な構造が反応速度の溶媒粘度依存性という形でどのように現われるかを調べたところ,基質飽和条件下で活性が粘度ηに対してη^<-1>に比例した。粘度増大にはグリセロールを用いた。このことは,酵素が律速過程において流体力学的なまさつを伴うような比較的大きい動きをしている事を示唆している。増粘性剤としてポリエチレングリコールを用いるとηに対する依存性は分子量の増大とともに小さくなる。この事はポリエチレングリコール依存下では水の巨視的な粘度ηと分子レベルでの粘度が一致していないという従来の見解に一致している。 一方,酵素の二つのサブユニットの間で中間体をやりとりして働く二つの活性中心の間を化学架橋試薬で架橋してから電子顕微鏡で観察すると架橋しない時に比べ二つのサブユニット間の間隔が小さくなっている。この事は酵素の動作時にはこの二つの活性中心がかなり近くまで近づく動きをくり返さないと反応が進まない事を示す。 以上の事から複数の素子を集めて複合素子を作る時,一つ一つの活性部位の間で反応中間体がロスなくやりとりできるための十分な動きを活性中心間の保障する設計が必要であるという事がわかった。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] Toshiya,Osada: Journal of Biochemistry. 103. 212-217 (1988)
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[Publications] Atsushi,Ikai: Journal of Biochemistry. 103. 218-224 (1988)
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[Publications] Daisuke,Okada: Analytical Biochemistry. 169. 428-431 (1988)
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[Publications] Toshihiro,Kitamoto: Journal of Molecular Bioligy. 203. 183-195 (1988)
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[Publications] Hideo,Arakawa: Journal of Biological Chemistry. (1989)
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[Publications] Toshiya,Osada: Journal of Ultrastructure and Molecular Structure. (1989)
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[Publications] 猪飼篤: "はたらくバイオ分子タンパク質" 東京化学同人, 1-193 (1988)