1988 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
63580217
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
高橋 征三 日本女子大学, 家政学部, 助教授 (00011693)
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Keywords | NMR / ヘム蛋白質 / 軽水 / 試料管 / 選択的励起パルス / 11パルス / 差NOE |
Research Abstract |
(1)軽水測定用NMR試料管の試作・改良を行った。昨年度までに対称型NMR試料管の概念を提出し、一応の目的を達成したが、試作品は取り扱いが難しく、熟練しないと使いこなせなかった。それは磁化率を調整するために、上下プラグに溶媒を充填する形式だったためである。今回はより実用性を求めて、磁化率を調整したガラス棒を用いる構造を採用した。この改良によって壊れにくくなり、取り扱いが簡単になっただけでなく、価格も1/4になった。ただし水溶液以外の試料には使えないので、一般性は失われた。しかし現在のシステムは(イ)温度変化実験のとき特にデッドボリュームが多くなる。(ロ)脱気やガス交換ができないという欠点をかかえている。これらの改良も含めて64年度に実用化を目指して試作・実験を行う予定である。 (2)選択的励起パルス列の実験を行い、目標の信号抑制比を得ることに成功した。つまり非対称の11パルス列を組み合わせる方法を開発し、広い範囲にわたって位相の歪みがなく、平坦なベースラインのスペクトルを得ることができた。従来数多くの選択的励起パルス列が提唱されているが、申請者は本来消えるべき軽水の信号が何故残るのかという問題に取り組み、それを軽水信号の放射減衰という概念でまとめた。この概念のもとに、軽水信号の放射減衰を逆に利用し、消えずに残った軽水信号を互いに打ち消し合う方法を提唱した。この方法を利用すると、11パルスという最も単純なパルス列で必要十分な信号抑制比が得られることを証明した。(第27回NMR討論会に報告、J.Mag、Res.に投稿中) (3)上記の方法を使い、差NOE(核オーバハウザ効果)の予備実験に着手し、軽水中でも信号の微小な強度変化が極めて鋭敏に検出できる見通しを得た。現在低分子のモデル化合物について実験を行い、予想外の極めて興味深い知見を得つつある。
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