1988 Fiscal Year Annual Research Report
酵素反応をモデルとした高選択性、高活性酸素酸化触媒の研究
Project/Area Number |
63607516
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
成田 吉徳 京都大学, 理学部, 助教授 (00108979)
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Keywords | チトクロームP-450 / 光合成 / 酸素発生錯体 / 水の酸化 / マンガンポルフィリン / 酵素モデル反応 / 触媒的酸化反応 / 高原子価マンガンオキソ錯体 |
Research Abstract |
チトクロームP-450に代表される一酸素添加酵素の活性部位にはヘム鉄が存在し、その高原子価オキソ錯体が有機基質の酸化を触媒している。最近モデル反応としてマンガンポルフィリンを用い酸素原子転嫁性を持つ各種酸化剤(過酸、次亜鉛素酸等)を用いることにより、その高原子価オキソ錯体が生成し、更に有機化合物に対して類似の反応性を示すことが判明してきた。一方、植物の光合成反応中心においては多核マンガン錯体が水の酸化による酸素発生に関与しているが、その実体は不明である。そこで水分子の金属への配位が起こり易いマンガンポルフィリンを用い、水溶液中でその二電子酸化によりオキソ錯体を生成することができれば新しい酸化反応系が構築できると共に、未解明の光合成における水の酸化反応に対して新たな示唆が得られるものと考え研究を進めた。酸化反応は触媒量のマンガンポルフィリンの含水溶液中オレフィンあるいは飽和炭化水素の共存下で一電子酸化剤である硝酸第二セリウムアンモニウム(CAN)を滴下することにより行った。この研究により以下の結論が得られた。1.オレフィンあるいは炭化水素に対応するエホキシド、アルコールがそれぞれ触媒に対し最高300モル得られた。2.本反応は水、CAN、触媒のいずれが欠けても進行せず、また同位体標識実験より、酸化生成物中の酸素原子は用いた水に由来するものと結論づけられた。3.可視スペクトル、ESR、ストップド・フロー法等を駆使した反応機構的研究により、マンガンポルフィリンの可逆的2電子酸化により反応が進行しており、生成する化学種はMn^v(=0)である可能性が高いと考えられた。以上の結果は合成化学的には、新しい酸化反応法の開拓への発展性を示しており、一方光合成反応中心のモデル化の立場からはMn二核錯体による2分子の水の4電子酸化の可能性を指摘したと云える。
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[Publications] Y.Naruta: Chem.Lett.135-138 (1988)
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[Publications] James P.Collman: Bull.Chem.Soc.Jpn.61. 47-57 (1988)
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[Publications] Y.Naruta: Chem.Lett.225-228 (1988)
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[Publications] Y.Naruta: J.Org.Chem.53. 1192-1199 (1988)
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[Publications] Y.Naruta: Bull.Chem.Soc.Jpn.61. 1815-1817 (1988)
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[Publications] Y.Naruta: J.Chem.Soc.Perkin Trans.1. 1143-1148 (1988)
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[Publications] James P.Collman: J.Am.Chem.Soc.110. 3477-3486 (1988)
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[Publications] Y.Naruta: Tetrahedron. 45. (1989)
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[Publications] Y.Naruta: Chem.Lett.(1989)
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[Publications] Y.Naruta: J.Am.Chem.Soc.110. (1989)
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[Publications] Y.Naruta: "The Chemistry of the Quinonoid Compounds,Vol.2" John Wiley & Sons, 241-402 (1988)
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[Publications] 成田吉徳: "有機化学実験のてびき 1." 化学同人, 100-102 (1988)