1988 Fiscal Year Annual Research Report
ハロカーボンおよびトリチウムによる中深層水の形成過程の研究
Project/Area Number |
63610502
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
渡辺 修一 北海道大学, 水産学部, 助手 (00167131)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原田 晃 北海道大学, 水産学部, 助手 (30142706)
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Keywords | 化学トレーサー / ハロカーボン類 / トリクロロフルオロカーボン / ジクロロフルオロカーボン / トリチウム / 海水循環 / 中深層水の形成過程 |
Research Abstract |
海洋の短いタイムスケールの海水流動、循環、混合過程を研究するうえで有効なハロカーボン類の実用的分析方法の確立とトリチウムの分析方法について検討した。また、北西部北太平洋において中深層水の形成過程を明らかにするためにトリチウム測定用海水の採取、海水中のハロカーボン類の抽出、捕集を行なった。後者は、試料採取が中心のためにまだ十分な結果が得られていないが、その中の特徴的な結果を示す。 海水中のハロカーボン類を高感度に再現性良く分析するためには、密封放射線源を用いたECD検出器が不可欠である。この検出器を船上で用いるためには、測定器の運搬、管理が問題となる。そこで、船上ではハロカーボンの抽出捕集のみを行ない、研究室で定量する方法を検討した。表面海水濃度のトリクロロモノフルオロカーボン(約2pmol/l)とジクロロジフルオロカーボン(約1pmol/l)では、繰り返し精度約2%,ブランク0.02pmol/l以下で測定可能となった。分離定量を同時に行なう方法でも2%弱の繰り返し精度であるため、両者に差は見られない。実際に、現場の船上で定量分析したものと同じ試料からハロカーボン類を分離捕集し、研究室で定量して得られた鉛直分布は、分析精度内で一致した。 今年度観測を行なった三陸沖のハロカーボン類の鉛直分布の一つに750m付近に極大が見られた。この観測は十分でないので明確なことは言えないが、親潮潜流の存在を示しているのかも知れない。 日本海の観測から得られていたトリチウムとハロカーボン類の特徴的な鉛直分布を説明する試みを簡単なモデルを用いて行なったところ、鉛直的な移流が日本海ではかなり速くなければならないことが示され、他の知見と一致した。これにより、今後の中深層水の形成過程をモデル化するための知見のいくつかを得た。
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