1988 Fiscal Year Annual Research Report
肝癌発生とB型肝炎ウイルス増殖に関する分子生物学的研究
Project/Area Number |
63614002
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松原 謙一 大阪大学, 細胞工学センター, 教授 (20037394)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三輪 正直 国立がんセンター研究所, 副所長 (20012750)
千坂 修 大阪大学, 細胞工学センター, 助手 (80188474)
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Keywords | B型肝炎ウイルス / ヒト胎児肝細胞 / 組込み / トランスジェニックマウス |
Research Abstract |
B型肝炎ウイルスのヴイリオンが感染・増殖できる系の確立は、本ウイルス研究の悲願ともいえるものであったが、我々はヒト胎児細胞の一次培養系を用いるとこれが再現性良く実現できることを示した。この系に感染するウイルスは、表面抗原に対する抗体に曝すことにより失活することも示され、ワクチンが作用する基本的機構をも同時に明らかにできた。 この感染系を用いて、次にヴイリオン感染後僅か一週間後には本ウイルスのゲノムDNAが細胞DNA中に組込を起こしていることを発見した。本ウイルスがこのように早い時期に宿主染色体に組込まれるということは、これまで全く予期されていなかったことである。この組込みDNAをクローニングしたところ、ウイルスはそのDNA複製開始点を使って、ほぼ全長を組込ませた構造をしていることが明らかになった。全く独立に得られたもう一つの組込み体もほぼ同様な構造をとっているので、これにより、ウイルスが宿主に組込を起こす機作を推測する手懸かりをうることができた。 さらに、本ウイルスによる肝炎の生起のしくみを解明し、あわせてその過程で肝癌が生じて来るプロセスを調べる目的で、本ウイルスゲノム1.2コピー分を組み込んだトランスジェニックマウスを作製した。このマウスは肝・腎の二臓器でウイルス成分を産生し、ヴイリオンと思われる粒子を血中に放出している。本系は、次年度以降適切なT細胞を導入することにより、肝炎を断起するモデル動物として所期の研究目的に活用できるものと考えられる。
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[Publications] K.Araki 他: Proc.Natl.Acad.Sci.USA. 86. 207-211 (1989)
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[Publications] M.Yamaguchi 他: Eur.J.Cell Biol.47. 138-143 (1988)
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[Publications] I.Hatada 他: Oncogene. 3. 537-540 (1988)
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[Publications] T.Nakamura 他: Nucheic Acids Res.16. 4865-4873 (1988)
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[Publications] T.Ochiya 他: Proc.Natl.Acad.Sci.USA. 86. (1989)