1988 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
63618502
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石川 統 東京大学, 理学部, 教授 (70012482)
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Keywords | アブラムシ / rDNA / hidden break / シンビオニン / groEL / chaperonin / 細胞外共生微生物 |
Research Abstract |
本年度はアブラムシ、その細胞内共生体ならびに細胞外共生体を実験材料としてさまざまな角度からの実験を行なった。以下にその概要を項目別に記す。 1.アブラムシ自体のrDNAの構造を解析し、この28SrRNAが昆虫類の中で唯一例外的に分子の中間点付近のhidden break(リン酸ジエステル結合の切れ目)を欠く原因を明らかにした。他の昆虫では、28SrRNA前駆体のexpansion segment5の領域から著しくAUに富む数十塩基のマクレオチドが切りとられるためにhidden breakが生じ、この反応に必要と思われるシグナル配列も共通にみられる。これに対し、アブラムシではこの部分が脊椎動物等のものに似て、むしろGC-richであり、シグナル配列をも欠いている。これらの結果に基づき、RNA分子の自己触媒機構によるhidden break導入の可能性を考え、in vitroでこれを検討する実験を行なったが、現在のところは成功していない。 2.細胞内共生体がin vitroで唯一合成しているタンパク質であるシンビオニンの分離・精製を行ない、そのオリゴマー形状ならびに免疫的反応性などから、当分子が大腸菌groELタンパク質と相同な分子種であることをつきとめた。シンビオニンが共生体においてもchaperoninとして機能しているか否かを現在検討中である。 3.アブラムシから腸内細菌様の細胞外共生微生物を2種、単離培養し、それらの性質を調べたところ、そのうちの1種はいくつかの点で細胞内共生体共通の性質をもつことがわかった。この菌の形状ならびに細胞壁脂質組成などはStaphyloeocusとの類似を示唆したが、23rDNAの塩基配列はむしろ枯草菌との類縁を強く示唆した。しかし、細胞内共生体は基本的にグラム陰性菌であるため、今回見出されたバクテリアとの関係については、まだ結論に達していない。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] Y.Kawata: Comparative Biochemistry & Physiology. 91B. 149-153 (1988)
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[Publications] Y.Kawata: Comparative Biochemistry & Physiology. 91B. 155-157 (1988)
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[Publications] H.Ishikawa: International Review of Cytology. 116. 1-45 (1989)
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[Publications] K.Ogino: Nucleic Acids Research.
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[Publications] C.Ohtake: Insect BioChemistry.
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[Publications] 石川統: "バイオサイエンスの招待" 岩波書店, 1-143 (1988)
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[Publications] 石川統: "共生と進化:生態学的進化論" 培風館, 1-273 (1988)