1988 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト免疫グロブリンの糖鎖構造を指標とした、人類集団の分子進化
Project/Area Number |
63618515
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Research Institution | Nagoya City University College of Nursing |
Principal Investigator |
高橋 禮子 名古屋市立大学, 看護短期大学部看護学科, 教授 (90079989)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安田 陽子 名古屋市立大学, 医学部, 講師 (70080009)
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Keywords | IgG糖鎖 / 分子進化 / ヒト免疫グロブリン |
Research Abstract |
ある糖蛋白質糖鎖は遺伝子の一次産物である多くの糖転位酵素と糖分解酵素が複雑に関与して作り上げられた、遺伝子の二次産物である。糖転位酵素は互いに類似しているのでその精製は最も困難なものの一つでありまた幾つかの糖転位酵素の一次構造が明らかになったとしてもその酵素の作り出す糖鎖構造がわかるわけではなく糖鎖構造はそれ自身を直接分析してみなければわからない。人類集団の分子進化を論ずる為にIgGは非常に良い材料である。なぜならIgGには少なくとも20種以上の異なった糖鎖をもつ分子種が存在しており、個人によって糖鎖パタンに差があることを申請者は既に観察していたからである。以下に得られた結果を述べる。 1.人類、男女、地域等の起源の明らかなヒトの血液をできるだけ多数、個別に採取し、IgGを単離精製した。 2.IgG糖蛋白質からグリコペプチダーゼにより糖鎖を切り離し、その還元末端を蛍光ラベルして高速液体クロマトグラフィで展開し、得られた糖鎖パタンを比較した。申請者はこれに先立ち比較的簡単な操作でIgGの十数種の糖鎖の量比が一目でわかる糖鎖マップ法を完成している。それにより各個人のIgG糖鎖の微細な相違を明らかにする事ができた。 3.しかしこの研究の成否は如何にして多種多様なIgG試料を集めるかということにかかっており、現在ではまだ20例足らずの試料の解析をしたに過ぎないので、統一的な結論は下せない。将来なるべく広範囲、多数のヒトの個体からIgGを得てその糖鎖を分析し、人種、家系、地域的分布等による差異を詳しく調べることにより日本人のルーツ、人種的類縁関係までを推定できるのではないかと期待している。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Noboru,Tomiya: Anal.Biochem.171. 73-90 (1988)
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[Publications] Royston,Jefferis: Biochem.J.(1989)
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[Publications] 高橋禮子 編著: "生物化学実験法:糖蛋白質糖鎖の構造研究法" 学会出版センター, (1989)