1988 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
63637503
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
林 正男 お茶の水女子大学, 理学部, 助教授 (60110516)
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Keywords | ビトロネクチン / 細胞接着 / 血液凝固 / 肝疾患 / ヘパリン / ウエスタンブロット / 糖タンパク質 / 血液 |
Research Abstract |
ビトロネクチンは1983年に発見された血漿糖タンパク質で、新しい血液凝固・線溶調節因子である。ビトロネクチンはトロンビン・抗トロンビンIII複合体に結合するばかりでなく、血小板や線維芽細胞に作用して、それらの細胞外マトリックスへの接着を促進し、生体内では、多彩で巧妙な働きをしていると思われる。しかし、今まで、ビトロネクチンの精製が困難であったために、ビトロネクチン分子の構造と機能の解明は十分ではなかった。 本研究によって得られた新たな知見、成果は以下の通りである。 1.ヒト血漿からビトロネクチンを精製する方法の主要な点は、本研究代表者により概ね確立していた。その後新たに出現した操作上の問題点を改善し、完成度の高いビトロネクチン精製法を確立した。 2.ヒト血漿中のビトロネクチンを免疫学的手法により定量する方法を確立した。方法は0.1μlの血漿をSDS電気泳動後、ウエスタンブロットし、ビトロネクチン抗体で染色後、2次元デンシトメトリーを行う方法である。この方法により5〜35ngのビトロネクチンを75Kと65Kの分子量別に定量できた。この結果、1)肝疾患患者では血漿中のビトロネクチン濃度が大きく低下していること、2)75Kと65Kの存在比はヒトにより異なり、75Kの多いI型、75Kと65Kが同量のII型、75Kの少ないIII型、の3つのビトロネクチン血液型に分類されること、3)ビトロネクチン血液型は、疾患とは関係ないこと、などの知見が得られた。 3.ビトロネクチンのヘパリン結合性を検討した結果、ヒト正常血漿中に存在するヘパリン結合型ビトロネクチンは会合体を形成し、65K存在比が増しているなど、特異な存在状態であることの知見が得られた。 今後、上記の成果に基づいて、ビトロネクチンの構造と機能及びその異常症の研究をさらに発展させていきたい。
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[Publications] K.Kubota: Cell Struct.Funct.13. 123-128 (1988)
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[Publications] M.Izumi: Cell Struct.Funct.13. 217-225 (1988)
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[Publications] T.Yatohgo: Cell Struct.Funct.13. 281-292 (1988)
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[Publications] M.Izumi: Biochim.Biophys.Acta. 990. 101-108 (1989)
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[Publications] 林正男: 代謝病ハイライト. 39-42 (1988)
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[Publications] 林正男: 生体の科学. 39. 294-298 (1988)