1988 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
63640503
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
岸本 健雄 東京工業大学, 理学部, 教授 (00124222)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 有弘 東京工業大学, 理学部, 助手 (00208456)
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Keywords | 卵成熟促進因子 / MPF / サイクリン / 卵成熟分裂 / 蛋白合成 / 細胞周期 / 遺伝子のクロン化 |
Research Abstract |
動物卵の成熟は、蛋白質性の卵成熟促進因子(MPF)が卵内で活性化されることによって誘起される。MPF活性は減数分裂周期に応じて変動し、しかもMPFは単に卵細胞に限らず真核細胞に共通の分裂中期促進因子であると筆者らの研究により判明している。そこで本研究計画では、MPF活性の制御機構を明らかにすることによって、卵成熟分裂周期を調節する機構を解明する手掛りを得ることを目的とした。 マウスやヒトデの卵成熟の場合、第2減数分裂に至るMPF活性の出現には蛋白合成が必要である。しかしMPF前駆体は卵成熟過程において常に存在していると予測されているので、MPFの活性化に関与している蛋白が新たに合成される可能性が考えられる。そこでヒトデ成熟卵からRNAを抽出し、poly(A)^+RNAを得てイトマキヒトデ或いはアフリカツメガエル未成熟卵に微小注射したところ、それだけで卵成熟が誘起された。 近年、海産無脊椎動物卵の分裂期特異的蛋白としてサイクリンが見出され、ホツキ貝卵・ウニ卵についてはその遺伝子も得られている。そこでウニのセンス及びアンチセンス・サイクリンオリゴヌクレオチドを合成し、1ザン解析等によって検討したところ、筆者らの卵成熟誘起活性をもつヒトデmRNAはサイクリンと相同であると判明した。現在、ヒトデ成熟卵からcDNAライブラリーを作製してヒトデ・サイクリンcDNAをクロン化できたので、その塩基配列を決定中である。 最近、MPF分子のサブユニットの一つに分裂酵母cdc_2遺伝子産物が含まれることが確実となってきている。しかし、それがM期特異的なMPF活性として機能する機構は未だ不明である。この点に本研究のサイクリンが関与することが予測され、今後はその解明を目ざしたい。なお、マウス卵からは微小注射に足りうる量のmRNAを抽出することは不可能であり、ヒトデ卵の使用は、この点を克服するものである。
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[Publications] T.Kishimoto: Development,Growth and Differentiation. 30. 105-115 (1988)
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[Publications] N.Hashimoto: Developmental Biology. 126. 242-252 (1988)
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[Publications] S.Hirai: Journal of Experimental Zoology. 245. 318-321 (1988)
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[Publications] N.Hashimoto: Journal of Experimental Zoology. 247. 177-182 (1988)
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[Publications] F.Shilling: Developmental Biology. (1989)
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[Publications] 岸本健雄: 蛋白質・核酸・酵素、臨時増刊号「細胞骨格の機能-新たな研究の展開」. (1989)