1988 Fiscal Year Annual Research Report
配偶子成熟に必要な微小環境に欠陥をもたらすマウスのS1突然変異の発生工学的研究
Project/Area Number |
63640507
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
北村 幸彦 大阪大学, 医学部, 教授 (70028520)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中野 徹 大阪大学, 医学部, 助手 (00172370)
金倉 譲 大阪大学, 医学部, 助手 (20177489)
藤田 潤 大阪大学, 医学部, 助教授 (50173430)
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Keywords | 始原生殖細胞の増殖と分化 / 分化の微小環境 / 不妊 / 卵巣 / 精巣 / 融合キメラ |
Research Abstract |
マウスS1遺伝子座におこった突然変異が生殖細胞の分化におよぼす影響について融合キメラを作製することによって解析した。1)S1突然変異遺伝子とS1^d突然変異遺伝子をもつS1/S1^dマウスはオス・メスとも生殖細胞が正常の5%と減少し、少数ある生殖細胞の分化もおこらないために不妊である。この生殖細胞・分化の異常が、始原生殖細胞の欠陥のためなのか、あるいは始原生殖細胞をとりまく微小環境の欠陥のためなのかを知る目的で、S1/S1^dの胚と+/+の胚を融合させてキメラマウスを作製した。+/+マウスは前身黒色であり、S1/S1^dマウスはメラノサイトを欠損するために前身白色であるが、S1/S1^dと+/+のキメラは白と黒の稿を持つことにより区別される。このキメラマウスは生殖力を持ち、+/+のマウスと交配して得られた仔の遺伝子型を毛色より判定したところ、S1/S1^d胚由来の始原生殖細胞と+/+胚由来の始原生殖細胞の両方が、キメラの精巣内で精子にまで分化していることがわかった。S1/S1^d胚由来の始原生殖細胞は本来正常であり、正常の微小環境にめぐまれれば、その増殖・分化は正常におこると考えられる。キメラマウスの精巣を組織学的に観察すると、生殖細胞の分化がおこっている精細管と、おこっていない精細管の両方がみられる。分化のおこっている部分は+/+胚由来のセルトリ細胞、分析のおこっていない部分はS1/S1^d胚由来のセルトリ細胞により被われていると考えられた。2)S1^tはS1遺伝子座におこった弱い突然変異で、S1/S1^tマウスはメスのみが不妊である。S1/S1^tの胚と+/+の胚からキメラマウスを作製してしらべたところ、S1/S1^tの始原生殖細胞、顆粒膜細胞はともに正常であり、S1/S1^tマウスの卵巣外の内分泌機能も正常なので、莢膜細胞の異常のために顆粒膜細胞の増殖・分化がおこらず、卵胞が形成されないことが、S1/S1^tマウスの不妊の原因と考えられた。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] Nakayama,H.: Development. 102. 107-116 (1988)
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[Publications] Nakayama,H.: Development. 102. 117-126 (1988)
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[Publications] Kuroda,H.: Developmental Biology. 126. 71-79 (1988)
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[Publications] Nakayama,H.: Biology of Reproduction. 39. 923-927 (1988)
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[Publications] Fujita,J.: Journal of Cellular Physiology. ]34. 78-84 (1988)
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[Publications] Fujita,J.: Blood. 72. 463-468 (1988)
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[Publications] Kitamura,Y.: "Unique features in differentiation of mast cells.In Cell Differentiaion,Genes and Cancer" IARC(Lyon), 203(11-19) (1988)
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[Publications] Kitamura,Y.: "Ontogeny of mast cells. In The Immunology of Fetus" CRC Press(Boca Ratorn,FL),