1988 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
63810006
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Research Category |
Grant-in-Aid for Developmental Scientific Research
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Research Institution | National Research Institute for Cultural Properties, Tokyo |
Principal Investigator |
青木 繁夫 東京国立文化財研究所, 修復技術部, 室長 (60088797)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
門倉 武夫 東京国立文化財研究所, 保存科学部, 主任研究官 (10000457)
平尾 良光 東京国立文化財研究所, 保存科学部, 室長 (40082812)
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Keywords | プラズマ / 出土金属遺物 / 保存修復 / 金属腐食 / 塩素 / ソックスレー / 脱塩処理 / 中性子放射化分析 |
Research Abstract |
この研究の目的は、プラズマによる出土金属遺物の保存修復法の開発とその処理システムの確立にある。 本年度は、従来実験サンプルとして使用して来た鉄鏃などより大きな遺物をプラズマ処理するための装置を設置するためのプラズマ条件設定の実験を実施した。 プラズマ処理の効果を定量値で評価するため、その前後に遺物を中性子放射化分析をして塩素の減少量を評価した。その結果直流プラズマ(三種類の実験条件を設定した)では高周波プラズマ(直流プラズマと同じく三種類の条件設定をした)と比べて塩素の減少量がきわめて少ないことが判明した。その原因は真空度が十分ではなかったためと、高周波プラズマのように分極が変化しないで常に一定であるためと考えられる。これらの実験結果をふまえて出力3キロワットの高周波発生器を使用して装置を設置することとした。 これら二種のプラズマ発生方法によって処理した遺物を処理中の錆の発生を防止するために窒素ガス雰囲気にしたソックスレー脱塩装置を用いて抽出実験をしたところ、直流プラズマで処理したもので当初の塩素の約80%程度まで除去できることがわかった。また抽出液中の塩素量をイオンクロマトグラフィーで定量したところ中性子放射化分析の結果と相関関係があることもわかった。またこれらのプラズマ処理実験はすべて400度前後の温度で処理されたためヘマタイトがマグネタイトに還元されていることもX線回折分析で確認されている。 このような温度は、金属結晶も変化させていると考えられるので今後は電子顕微鏡等で確認(金属がもつ情報を欠なわせる恐れがある)し、より低い温度でのプラズマ処理条件を確認する実験をする必要がある。
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