2015 Fiscal Year Annual Research Report
アンチリジンを含むポリマーを元素ブロックとする超分子二次元シートの創製と機能開発
Publicly Offered Research
Project Area | Creation of Element-Block Polymer Materials |
Project/Area Number |
15H00726
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
小泉 武昭 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (60322674)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 超分子 / 1,9,10-アンチリジン / 交互共重合体 / 水素結合 / 電荷移動相互作用 / 吸収スペクトル / 発光スペクトル |
Outline of Annual Research Achievements |
高分子主鎖間を架橋することによって生成する架橋高分子は、優れた熱安定性、化学的特性を示すことが知られているが、溶媒に対する溶解性をほとんど示さない、力学的強度が弱いなどの欠点を有する。一方、高分子主鎖と架橋部位となるユニットを非共有結合性相互作用によって連結した場合、自己組織化的に熱力学的最安定化構造を構築でき、且つ外部刺激により応答可能なスイッチング性を発現することが期待できる。本研究は、剛直な構造を持つ高分子を用い、剛直な架橋分子によって連結することで、元素ブロックポリマーの機能の集積による新たな物性の発現、高分子主鎖の方向を揃えた超分子構造、シート型構造の創製を目指す。 平成27年度は、分子間相互作用部位を組み込んだ剛直な主鎖構造を持つ元素ブロックポリマーとして、ジベンゾ[c,h]アンチリジン骨格を含むドナー-アクセプター(D-A)型交互共重合体の合成について検討した。 ジベンゾ[c,h]アンチリジン5-および9-位にボロン酸エステルを導入した前駆体と種々のジブロモ化電子供与性芳香族化合物とによる有機金属重縮合法により、5種類の交互共重合体を合成した。合成した各ポリマーは、260 nm付近および350-450 nm付近にπ-π*遷移に基づく吸収を、λEM = 485-580 nmに発光を示した。これらの値は、それぞれのモノマーユニットの吸収及び発光波長とは異なり、長波長シフトを示していることから、重合が進行していることが明らかになった。組み合わせるドナーユニットとしてアントラセン-9,10-ジイルを用いた場合、他のポリマーと比べてより長波長側に発光を示した。濃度依存性の検討を行った結果から、この特異な発光波長のシフトは、分子内でのアントラセン-アントラセンのエキシマー形成によるものであると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ジベンゾ[c,h]アンチリジンは、3個のピリジンが縮環した部位を含む剛直な構造を持ち、強い電子吸引性、3個のイミン窒素による強固な水素結合の形成能などの特徴を持つ。ジベンゾ[c,h]アンチリジンの5-および9-位へのπ共役系分子の連結により、ジグザグ構造を持つポリマーを合成した。ジベンゾ[c,h]アンチリジンの5-および9-位にボロン酸エステルを、2-および12-位にフェニル基を導入した前駆体と、種々のジブロモ化芳香族化合物とのSuzuki-Miyauraカップリングにより重合を行った。電子供与性芳香環ユニットとして、9,9-ジオクチルフルオレン-2,7-ジイル(Flu)、N-オクチルカルバゾール-2,7-ジイル(CBz)、チエニルチオフェン-2,5-ジイル(TT)、アントラセン-9,10-ジイル(A)、1,4-ジオクチルベンゼン-2,5-ジイル(O)をもつポリマーをそれぞれ合成した。GPCによる分子量測定は行えなかったが、1H-NMRの測定から、アンチリジンユニットが6個程度含まれるポリマーの生成が示唆された。これまで1,9,10-アンチリジンを含むポリマーの合成例はなく、これが初めての例である。長波長側の吸収帯を比較すると、Poly-AnthFlu, Poly-AnthCBzおよびAoly-AnthOはほぼ同じ位置に極大吸収を示す。他方、Poly-AnthTTは長波長側に、Poly-AnthAは短波長側にシフトして観測された。発光スペクトルでは、Poly-AnthAが最も長波長側のλEM = 579 nmに極大発光波長を示した。これは、アントラセンユニットが大きなπ-平面を有し、かつ面と面を合わせる構造で並ぶため、エキシマーを形成し、そこからの発光が観測されたためだと考えられる。Poly-AnthFluは他のポリマーに比べて高い発光量子収率(Φ = 0.85)を示した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究において、これまでに報告例の無い1,9,10-アンチリジンを主鎖骨格に含む交互共重合体の合成に成功し、分光学的性質を明らかにすることができた。各ポリマーの合成に関しては、再度試みるとともに、分子量に関する知見を得るための測定を行う。さらに、分光学的性質を比較することで、合成の再現性について明らかにする。アンチリジンを含むユニットは電子吸引性を示す。したがって、今回共重合の相手として選んだ電子供与性芳香環ユニットと組み合わせることで、D-A型相互作用に基づく特性を発現することが期待できる。実際に吸収スペクトルを観ると、長波長側に吸収体を示していることがわかった。この新しい吸収帯が、超分子相互作用による分子集積によりどのように変化するかを明らかにする。この現象については、モデル化合物の合成を行い、より詳細な検討を行う予定である。 分子集合体を形成させるための架橋分子として、両末端に三重の水素結合ドナーを有する直線型分子の合成を行う。水素結合ドナー部位としては、2,6-ビス(ヒドロキシメチル)フェノールの骨格を利用する。ドナー分子を合成できたら、本年度合成したアンチリジン含有ポリマーと反応させることにより、超分子構図体の構築について検討する。分光学的性質を紫外可視吸収スペクトル、発光スペクトルなどにより明らかにするとともに、集合体の形成に関する情報を動的光散乱法、NMRスペクトル、電子顕微鏡などを用いて得ることで、超分子材料としての可能性について探る。
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