2015 Fiscal Year Annual Research Report
パーヒドロポリシラザンを元素ブロックとするナノ複合材料の開発
Publicly Offered Research
Project Area | Creation of Element-Block Polymer Materials |
Project/Area Number |
15H00727
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
斎藤 礼子 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (30225742)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ナノ複合体 / ポリマー / シリカ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年はA)モノマー重合時のPHPS共存による有機-シリカナノ複合体の一段階合成,および,B)アゾ開始剤を有するシリカ微粒子の合成とラジカル重合、の二つを目的とした。 A)では、ベンゾオキサジン類を有機モノマーとしてPHPS存在下、加熱のみで有機-シリカナノ複合体の合成に成功した。この際、硬化温度を変えると得られる複合体の性質が大きく異なることを見出した。これは、ベンゾオキサジンが低温での硬化ではN,O-アセタール構造を形成するのに対し、高温での硬化では、水酸基を有するMannich構造となり、PHPSと優先的に反応するためであること、さらにこのため、得られる複合体の特性にシリカの特性が大きく反映することを見出した。PHPSの添加量は少ないほうが効果的であった。これは、少ないPHPS量により、PHPSの凝集が阻害され、分子分散的に有機部分と結合することから、高耐熱性、高バリア性を示すことをMolecule Modelを用いて解明した。 B)では、平成26年度に合成方法を確立したアゾ開始剤を有するシリカ微粒子を種々の粒径について、大量合成し、これを用いて、メチルメタクリレートのラジカル熱重合をおこなった。その結果、シリカと複合した状態のポリメチルメタクリレートは得られたが、シリカドメインは不定型となり、微粒子が崩壊したことが示唆された。そこで、微粒子のみを真空化加熱したところ、シリカの崩壊が起きた。熱膨張による崩壊を阻止するため、温度変化速度を十分低減し、加熱を行ったが、崩壊は阻止できず、アゾ基開裂時の窒素が崩壊の原因であることが明らかとなった。このため、類似方法により、粒径分布の狭い光RAFT剤を有するシリカ微粒子のPHPSによる重合をおこない、これに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、モノマー重合時にPHPSを添加し、ナノ複合体を一段で合成することを大目的としており、本年度は、モノマーとしてベンゾオキサジン類を用い、ナノ構造制御を目的とした。その結果、合成時、3つの反応、すなわち1)ベンゾオキサジンの硬化による水酸基の発生、2)PHPSのシリカへの転化、3)水酸基とPHPSの反応によるナノ複合化が競争的に進行することを明らかにし、これらの反応速度を焼結温度を因子とし、個別に制御することで、ナノ構造の精密制御と複合体の特性制御に成功した。特に、平成28年度の目標とした水蒸気バリア性と競争反応の関係を解明することに成功したことから、計画を上回る進度となったといえる。 本研究でのもう一つの目的である開始剤基を有するシリカ微粒子による有機モノマーの重合では、重合の進行に成功したことから、計画通りの達成といえる。しかし、重合の際、シリカ粒子が大きく破損することも新たに見出し、最終生成物としては次年度に特性解析を行うに適したものとはならなかった。破損の原因としては、アゾケイ開始剤の開裂時の窒素ガス発生、および、比較的高温での重合によるシリカ粒子の体積膨張が示唆された。そこで、第二案である、光反応性開始剤(光RAFT剤)をシリカ粒子表面に導入する方法について、検討を行い、ほぼ予定通りの開始剤基を有するシリカ微粒子が得られた。よって、第二の目的についてもおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
モノマー重合時にPHPSを添加し、ナノ複合体を一段で合成する系においては、これまで重合できなかった脂環式エポキシ基を有するエポキシモノマーについて、PHPSとの複合化を行う。具体的には、塩基性光カチオン重合時、チオールを添加し、デュアルキュアを行うことで、塩基性雰囲気下、水酸基を発生させ、これとPHPSを複合化し、脂環式エポキシ樹脂-シリカナノ複合体合成を試みる。この際、PHPSのアミノ基および、SiH基によるエポキシ硬化の阻害作用、ボイド発生を因子とし、高硬度、高透明性の複合体を合成する。さらに、直径8cmの単膜(自立膜)を作成し、水蒸気バリア性および、熱拡散性におけるシリカナノドメインの硬化を明らかにする。 シリカ微粒子による重合では、本年作成した光RAFT剤を有するシリカ微粒子について、従来よりも重合温度を低下させ、室温で光ラジカル反応を行い、ナノ複合体を合成する。この際、光RAFT剤の粒子への偏在化をEDAX-SEMより解析し、効率的な有機―無機複合化の基礎的知見とする。 得られた知見を統合し、PHPSの元素ブロックとしての複合体合成を総括する。
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Remarks |
H28年度用に更新改訂中
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Research Products
(20 results)