2015 Fiscal Year Annual Research Report
螺旋型元素ブロックを用いた多機能性ポリマーの創出
Publicly Offered Research
Project Area | Creation of Element-Block Polymer Materials |
Project/Area Number |
15H00731
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
廣戸 聡 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30547427)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ポルフィリン / ヘリセン / テトラセン / 近赤外発光 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで合成していたテトラフルオロ置換テトラセンの他に、ジブロモテトラセンを合成した。これにヒドロキシ基を導入し酸化したところ、フルオロ体と同様にcis型とtrans型のジケト体を高収率で得ることができた。cis型の二量体は加熱しても安定であるのに対し、trans型の二量体は加熱すると容易にエノール体に変換されることが分かった。このことについて、trans体のX線結晶構造解析を行ったところ、構造の違いにより、メチン炭素の酸性度が向上しているためと同定した。さらに、合成したジケト体を用いることによりジブロモ置換オキサテトラセンの合成に成功した。また、ジブロモ体を還元することにより、無置換のオキサヘリセンを得ることにも成功した。また、テトラセンにアミノ基を導入し、酸化することでアザヘリセンが高収率で合成できることも見いだした。いずれのヘリセンもアントラセン誘導体に比べて長波長シフトした吸収スペクトルを示し、近赤外領域に発光を示すことを明らかにした。 ポルフィリンのβ位にヒドロキシ基を導入し、酸化すると炭素炭素結合をもつ二量体が得られることを見いだした。この二量体はケトーエノール平衡により容易にエノール体に変化することをNMRスペクトルより明らかにした。また、β位を四箇所フェニル基で置換したポルフィリンを合成し、残りのβ位に一つアミノ基を導入して酸化したところ、ピラジン縮環型二量体が得られることを見いだした。この化合物の構造はX線結晶構造解析により明らかにし、ねじれ型ではなく、階段型構造をとっていることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
テトラセンを用いたアザおよびオキサヘリセンの系統的合成法の確立に成功し、新たな元素ブロックの創出に成功している。これらは光安定性に問題があるものの、カラムクロマトグラフィーによって光学分割することができ、さらに得られた光学異性体は、明確なコットン効果を示すCDスペクトルを与えることを見いだした。そのg値は比較的高いことから、近赤外キラル発光素子としての発展が期待できる結果であると考えている。 また、ポルフィリンにおいても、β位に置換基を導入し、酸化することで同様にピラジン型二量体が得られることを明らかにした。この結果は位置選択的な置換基の導入に繋がる結果であり、さらに改良を加えることで、目的の一つである螺旋型高分子の合成に繋がると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はヘリセン型ポルフィリンの合成とβ位置換ポルフィリンの高分子化をすすめていく。具体的には置換基の種類の変更による反応性の違いと、生成する二量体の構造的変化の依存性を調べることにより、螺旋構造の獲得に必要な条件を明らかにする。 また、同時にすすめている歪みをもつ分子の合成については、新たな元素ブロックとしてこれまでとは異なる元素の導入を行っていく。また、置換基を工夫することにより、積層構造を形成することによって、これまで合成できなかった超分子構造体の創出に取り組む。
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