2015 Fiscal Year Annual Research Report
分子ロボットに適した特性をもつ分散アルゴリズムの開発
Publicly Offered Research
Project Area | Development of Molecular Robots equipped with sensors and intelligence |
Project/Area Number |
15H00816
|
Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
大下 福仁 奈良先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 准教授 (20362650)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 分散アルゴリズム / 個体群プロトコルモデル / 自己安定 |
Outline of Annual Research Achievements |
分子ロボットを実現するためには、自律的に動作する膨大な数の分子デバイスを、自己組織化によりボトムアップに組み立てる必要がある。本研究では、分子デバイスを従来の計算機に対応させ、分散アルゴリズムの観点から分子ロボットを制御する手法の開発を目指す。とくに、先行研究を発展させることで、不安定な環境に対する耐性、少ない通信回数・状態変更回数など、分子ロボットに適した特性の実現を目指す。平成27年度の主な成果は以下の通りである。 (a) 個体群プロトコルモデルにおける緩自己安定リーダ選挙アルゴリズムの開発:個体群プロトコルモデルは、ランダムに移動するノード群が衝突時に交流して状態を変化させる状況をモデル化しており、分子ロボットへの応用が期待できる。提案アルゴリズムでは、ノード群が任意の状況から実行を開始しても、短時間でただ一つの代表ノード(リーダ)を選択し、それを十分に長い間維持することができる。この性質を従来より弱い能力のノード群に対して実現した。この性質により、不安定な環境に対して強い耐性をもつリーダ選挙を実現している。 (b) 匿名環境に対する自己安定1-極大マッチングアルゴリズムの開発:各ノードの区別が不能な匿名環境に対して、多数のペアを構成するための自己安定1-極大マッチングアルゴリズムを提案した。1-極大マッチングとは、「1つのペアを解消しても、2つのペアを増やすことができない」という性質を満たした極大マッチングであり、最大マッチングの3/2-近似となることが知られている。そのため、1-極大マッチングを実現することで、極大マッチングより多くのペアを構築することが期待できる。提案アルゴリズムは、1-極大マッチングを、匿名環境に対して自己安定的に実現している。匿名環境への対応、自己安定性の実現により、分子ロボットへの適用可能性を大きく向上させた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、(a)計算機ネットワークモデル、(b)モバイルロボットモデルの2つのモデルに対して、単純さ、不安定な環境に対する耐性、少ない通信回数・状態変更回数などの分子ロボットに適した特性をもつアルゴリズムの開発を目指した。 (a)については、匿名環境に対する自己安定1-極大マッチングアルゴリズムなどを開発しており、順調に進展している。 (b)については、当初の計画通り集合問題に対するアルゴリズムの開発を進めているが、あまり進展はなかった。 上記に加えて、より分子ロボットに適したモデルである(c)個体群プロトコルモデルに対して、緩自己安定リーダ選挙アルゴリズムを提案している。 以上より、(b)に対して多少の遅れが生じているが、(a)(c)の面で十分な成果を発表しており、全体としてはおおむね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、平成27年度に引き続き、1.計算機ネットワークモデル、2.個体群プロトコルモデル、3.モバイルロボットモデルに対して、単純さ、不安定な環境に対する耐性、少ない通信回数・状態変更回数などの分子ロボットに適した特性をもつアルゴリズムの開発を目指す。さらに、1.2.については、当初の目的通り、上記の特性間に存在するトレードオフを明らかにすることも目指す。 1. 計算機ネットワークモデル:平成27年度に開発した自己安定1-極大マッチングアルゴリズムを改良し、より分子ロボットに適したアルゴリズムの開発を目指す。具体的には、アルゴリズムの複雑性の改善を目指す。これにより、複雑性と通信回数・状態変更回数の間に存在するトレードオフを明らかにする。 2. 個体群プロトコルモデル:平成27年度に開発した緩自己安定リーダ選挙アルゴリズムを基盤技術として利用し、他のタスクに対して緩自己安定性をもったアルゴリズムの開発を目指す。とくに、個体群プロトコルモデルに対して計算機ネットワークモデルの技術を応用する手法の開発を目指し、モデルと特性の間のトレードオフを明らかにする。 3. モバイルロボットモデル:平成27年度から引き続き、弱い能力のロボットを集合させるタスクに対して、分子ロボットに適した特性をもつ分散アルゴリズムの開発を目指す。
|
Research Products
(10 results)