2015 Fiscal Year Annual Research Report
π中間子原子分光実験の発展
Publicly Offered Research
Project Area | Nuclear matter in neutron stars investigated by experiments and astronomical observations |
Project/Area Number |
15H00844
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
板橋 健太 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, 専任研究員 (30322093)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | カイラル対称性 / π中間子原子 / 質量分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
(d,3He) 反応を用いたπ中間子原子の精密分光測定をめざし、詳細な実験条件の策定を行った。実験では、これまでを上回る分光分解能での計測をめざし、既に得ている実験データを解析し、それをベースにシミュレーションをする事により分解能に寄与している要因を見積もった。その結果、焦点面に配置している検出器等の改良により、これまでの 200 keV (FWHM) を上回る分解能を焦点面全域で達成できる可能性がある事がわかった。また、特に系統誤差の要因についても検討を進め、π中間子の1s 状態の束縛エネルギーの決定に加えて、十分な統計を稼ぎ 1s, 2p のエネルギー差を計測する事で大幅に誤差を減らすことが出来る事が分かった。この結果を受けて RIBF の実験課題審査委員会にて錫112 から 124 までを網羅的に計測する新しい実験を提案し、約一週間のビームタイムが認められた。この実験を行う事で、カイラル対称性の秩序変数であるカイラル凝縮の密度依存性に関する知見を得る事が出来る可能性がある。提案と同時に、実験準備を始め、現在まで検出器の開発、標的の作成等を実施している。 また、逆運動学を用いたπ中間子原子分光についても検討を行っている。様々な実験条件を検討した結果、収量は小さいものの 100 keV (FWHM) を伺う分光分解能を得る可能性があることが分かった。これを実現するためには重水素標的を作成する必要があるが、分解能を損なわず、安全な取り扱いが可能な標的作成のためには十分な開発が必要である。当該年度予算の一部を用いて標的の開発を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(d,3He) 反応を用いたπ中間子原子の精密分光測定をめざした詳細な実験条件の策定を、既に得ている実験データを解析し、それをベースにシミュレーションを行う事で達成する事ができた。その結果、これまでを上回る分解能を達成する条件を策定する事ができた。必要な検出器等の開発は既に開始している。このような検討・準備状況を元に、RIBF の実験課題審査委員会に実験提案を行い、国際的で競争的な審査の末に、極めて高い(A)評価を得る事ができた。これをもって、カイラル対称性の秩序変数であるカイラル凝縮の密度依存性に関する知見を得る事をめざした、π中間子錫112 から 124 までを網羅的に計測する新しい実験を実施するための準備を進めている。現在まで、ビームタイムは割り振られていないが、おおむね順調に実験準備は進んでいると考える。また、同時に逆運動学についても詳細で発展的な検討を行い、既に標的作成等を開始しておりこちらも順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
(d,3He) 反応については、既に得られているデータの解析を行い、必要な検出器や標的等の開発を進めつつ、ビームタイムが割り振られるのを待って実験を行う。データ解析の結果については速やかに論文にまとめ投稿する。逆運動学については、重水素標的の開発を進め、安全な取り扱いが可能かどうか十分な試験を行って、実際のビームを用いた試験をめざした準備を行う。
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Research Products
(4 results)