2015 Fiscal Year Annual Research Report
可視・近赤外光による光アンテナ搭載完全水分解システム
Publicly Offered Research
Project Area | Chemical conversion of solar energy by artificial photosynthesis: a breakthrough by fusion of related fields toward realization of practical processes |
Project/Area Number |
15H00856
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
三澤 弘明 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (30253230)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 再生可能エネルギー / 人工光合成 / 局在プラズモン / 水分解 |
Outline of Annual Research Achievements |
プラズモン誘起水分解系において、半導体と金属ナノ構造、あるいは助触媒間のショットキー障壁の制御は、電子移動反応の促進や逆電子移動反応の抑制において極めて重要である。平成27年度は、界面ダイポールを利用してチタン酸ストロンチウム表面のショットキー障壁を制御すること、そしてオーミック接触を有している基板上に種々の水素発生助触媒を配置し、プラズモン誘起水分解の助触媒効果を明らかにすることを目的とした。ショットキー障壁を低減するためには表面100面のチタン酸ストロンチウム単結晶基板の酸化チタン終端面上にパルスレーザー堆積法を用いて、アルミン酸ランタンを一原子層堆積させた。一方、障壁を増大させるためには、チタン酸ストロンチウムの酸化チタン終端面上に酸化ストロンチウムを一原子層堆積させてからアルミン酸ランタンを堆積させた。これにより界面ダイポールの向きが逆転する。これらの基板の電圧電流特性を測定したところ、順バイアス時において電流が立ち上がる電圧がそれぞれ変化し、ショットキー障壁を変化させることに成功した。また、水分解に基づく光電流測定においても変化が見られた。今後、障壁の高さを最適化して効率の向上を図る。次に、チタン酸ストロンチウム基板とオーミック接触が得られているPt基板上に種々の水素発生助触媒(Rh, RhOx, Ru, RuOx, Pt)を配置して、プラズモン誘起水分解反応の助触媒効果を検討した。その結果、RhやRuといった金属だけではなく、RhOxやRuOxにおいても水分解効率が増大した。特に、RhをPt上に3 nm成膜した条件では、既報のPt助触媒に比べて約3倍近い助触媒効果が得られた。そこで、Pt/Rh合金を蒸着源にしてPt上に成膜し、光電流により水分解効率を検討したところ、光電流の増大が観測された。今後、PtとRhがコンポジットを形成しているか、または合金を形成しているかについて、高分解能TEMにより明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、ニオブドープ酸化チタンをチタン酸ストロンチウム基板の表面上に原子層堆積装置やパルスレーザー堆積法により成膜することによりショットキー障壁を低減することを目的として研究を進めた。しかし、電子移動反応の促進や逆電子移動反応の抑制には、単純にショットキー障壁を低減するのではなく、制御することが極めて重要である。そこで、本研究では界面ダイポールとしてアルミン酸ランタンを一原子層堆積させること、そしてその積層の順番を変化させるといった単純な方法によって界面ダイポールの向きを制御することを試み、ショットキー障壁を制御することに成功した。また、当初の計画通り、すでに半導体基板とオーミック接触が得られている基板上に種々の水素発生助触媒を配置し、その助触媒効果を明らかにするとともに、高分解能TEMを利用して助触媒の膜厚やEDXによる分析など緻密な実験を行った。さらに、最近ではRh/Ptのコンポジットや合金など助触媒効果に原子レベルの議論も入れつつある。以上の理由から、平成27年度は当初の計画以上に進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、界面ダイポールによりショットキー障壁を精緻に制御し、電子移動反応の促進や逆電子移動反応の抑制により水分解反応の効率の向上を図る。また、助触媒効果についても原子レベルでの検討を行う予定である。一方、助触媒効果を検討する上で重要な点は、助触媒や半導体基板の酸化の度合いである。XPS(光電子分光)やSTEM-EELS(走査透過電子顕微鏡-電子エネルギー損失分光)を用いて金属助触媒の酸化の度合いや基板表面の酸素欠陥の分布を検討する。基板表面は、NaClOなどの酸化剤により処理することにより、酸素欠陥の量を制御する。本研究では、2極での光電変換効率や水素発生能を比較し、酸化の度合いや酸素欠陥がプラズモン誘起水分解の反応効率に与える影響を検討する。まず、種々のガス雰囲気下において電極を高温でアニール処理することにより、助触媒のナノ粒子化を行い、さらに、助触媒の設計が水分解反応に与える影響も詳細に検討する。これらの研究項目を明らかにして最適化を図ることによりプラズモンを利用した可視・近赤外光による水の完全分解システムを構築し、本研究を総括する。
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Research Products
(65 results)