2015 Fiscal Year Annual Research Report
レーザープラズマによる固液界面反応の理解と骨結合性インプラントシステムへの応用
Publicly Offered Research
Project Area | Plasma medical innovation |
Project/Area Number |
15H00906
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
大矢根 綾子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, ナノ材料研究部門, 主任研究員 (50356672)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | リン酸カルシウム / アパタイト / 骨伝導 / 過飽和溶液 / 表面処理 / パルスレーザー / レーザープラズマ |
Outline of Annual Research Achievements |
歯科・外科用インプラントの表面にある種のリン酸カルシウムを成膜すると、骨伝導性を付与することができる。研究代表者らはこれまで、過飽和溶液を反応場とする液相成膜技術とレーザープラズマによる表面加工技術を組み合わせ、インプラント用の材料基材に対するリン酸カルシウム成膜技術を開発してきた。本研究では、レーザープラズマによる基材の表面反応過程を追求する基礎的研究に並行して、骨伝導性インプラントの開発を目指した応用研究を進めている。 基礎的研究において、本年度は、チタン金属基材表面における表面反応過程を実験的・計算科学的に追及した。具体的には、Nd:YAGナノ秒レーザーの基本波(近赤外光)、第2次高調波(可視光)、および第3次高調波(紫外光)を用いてチタン金属基材に対しリン酸カルシウム成膜を試み、表面分析と表面温度計算の結果から、リン酸カルシウム形成反応のフルエンスおよび波長依存性、ならびに表面反応過程を明らかにした。 応用研究においては、熱的影響の少ないフェムト秒レーザーを用い、イットリア安定化正方晶ジルコニア多結晶体(Y-TZP)の表面凹凸加工とリン酸カルシウム成膜を試みた。まず、連携研究者である欠端らのレーザー光走査システムにより、Y-TZP基材の表面全面にフェムト秒レーザープラズマ加工を施し、サブミクロン凹凸構造を形成させた。この基材の表面に過飽和溶液法を用いてリン酸カルシウムを成膜したところ、表面凹凸構造によるインターロッキング効果により、平滑な鏡面上に成膜した場合よりも強固な膜密着性が得られた。さらに、少数のウサギを用いて予備的な動物実験を実施し、フェムト秒レーザープラズマ加工後にリン酸カルシウムを成膜したY-TZP基材が、コントロールに比して強固に骨と固着することを示唆する結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、レーザープラズマによる表面反応過程を実験的・計算科学的に追求する基礎的研究と、骨結合性インプラントの開発を目指した応用研究を並行して進めている。基礎的研究、応用研究のいずれにおいてもおおむね当初計画の通りに研究を進め、期待通りの成果を挙げつつある。基礎的研究において得られた成果は国内・国際会議で発表済みであり、査読付き原著論文として発表予定である。また、応用研究において得られた成果については特許出願を行ったほか、成果の一部については国内・国際会議、ならびに査読付き原著論文として発表済みである。 以上の状況から、現在までのところ本研究はおおむね順調に進捗していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、レーザープラズマによる表面反応過程を実験的・計算科学的に追求する基礎的研究と、骨結合性インプラントの開発を目指した応用研究を並行して実施していく。 基礎的研究においては、本年度の研究で得られたチタン金属基材に関する成果を原著論文としてまとめるとともに、他の材料基材を用いた検討を進めていく。具体的には、各種ナノ構造解析技術(X線光電子分光法、薄膜X線回折法、透過型電子顕微鏡分析など)と計算科学的手法を用い、レーザープラズマにより誘起される基材の表面反応、ならびにリン酸カルシウム過飽和溶液(コントロールとして超純水)との反応を基礎的に追求し、効率的なリン酸カルシウム成膜のための指針を明らかにする。 応用研究においては、今年度と同様のウサギ動物実験を実施することで、結果の再現性を確認するとともに、骨と基材との界面の精密分析を行う。具体的には、まず、Y-TZP基材(角柱状)にフェムト秒レーザープラズマ処理を施した後、過飽和溶液を用いてリン酸カルシウムを成膜する。この基材をウサギ(成熟した日本白色家兎3kg)の脛骨近位骨幹端部に挿入する。術後4週で屠殺し、挿入部のX線撮影を行うとともに、基材の押し出し強度(骨結合強度)を測定する。また、非脱灰組織標本を作製し、骨組織とY-TZP基材との界面の状態を走査型電子顕微鏡、エネルギー分散型X線分析装置、および光学顕微鏡により評価する。 以上の研究を、研究代表者と5名の連携研究者との医工連携体制のもとで実施していく。得られた成果を国内・国際学会で発表するとともに、原著論文としてまとめる。
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Research Products
(26 results)