2015 Fiscal Year Annual Research Report
オキソボリル配位子のプロトン感応性を利用した新規多核反応場の構築
Publicly Offered Research
Project Area | Stimuli-responsive Chemical Species for the Creation of Functional Molecules |
Project/Area Number |
15H00924
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
高尾 俊郎 東京工業大学, 大学院理工学研究科(工学系), 准教授 (00313346)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | オキソボリル配位子 / ボリレン錯体 / ポリヒドリドクラスター |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでにアルキン配位子をもつ三重架橋ボリレン錯体と水との反応から、オキソボリル配位子が3つの金属間に架橋した三重架橋オキソボリル錯体を、合成することに成功した。ホウ素と酸素間に二重結合性の相互作用を有するといった非常に珍しいオキソボリル配位子の性質を明らかにすることを目的とし、アルキン配位子を持たないヒドリド―オキソボリル錯体の合成に取り組み、Et2NHを触媒とすることでヒドリド―ボリレン錯体と水との反応から、効率的にヒドリド―オキソボリル錯体を合成する手法の開発に成功した。
ヒドリド―オキソボリル錯体の反応性を調べることを目的とし、本年度はフェニルアセチレン、一酸化炭素、およびBF3との反応について検討した。フェニルアセチレンとの反応は脱水素を伴いながら速やかに進行し、アルキン―ボリレン錯体と水との反応から得られるオキソボリル錯体と同一の化合物が得られることを確認した。また、一酸化炭素との反応では、オキソボリル配位子が架橋様式を三重架橋から二重架橋へと変化させ、さらに3つの末端カルボニル配位子をもつ新規錯体が得られることを明らかにした。オキソボリル配位子のBO結合の伸縮振動の値は、二重架橋へと変化することで、三重架橋のものよりも高波数側にシフトし、二重架橋になることでBO間の結合次数が増加したことが示唆された。また、ルイス酸であるBF3との反応ではBO配位子にBF3が付加したアダクトが得られることを明らかにし、さらにアミンとの反応ではBF3が脱離し、オキソボリル錯体が再生されることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒドリド―オキソボリル錯体の反応性およびオキソボリル配位子の性質を調べるためには、原料となるヒドリド―オキソボリル錯体を純度よく大量に合成する必要がある。昨年度は反応条件の検討、および副生生物との分離方法の開発することで、目的とするヒドリドーオキソボリル錯体を簡便に合成する手法の開発に成功した。今後の反応性の検討を進める上で非常に重要である。また、期待通りヒドリドーオキソボリル錯体は高い反応性を示すことが確認でき、一酸化炭素やルイス酸との反応では新規化合物が得られることを明らかにすることができた。計画書では、異種金属クラスターへの展開についても触れてきたが、本年度は9族金属を含む異種金属クラスターについて、ボリレン錯体の合成法の開発ならびにオキソボリル配位子への変換を目指すこととする。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度はオキソボリル錯体とBF3との反応ではBO配位子が塩基点として機能することが確認できたが、BO配位子は3つのかさ高いCp*基に囲まれた空間内に収容されており、ルイス酸のサイズによってはアダクトの形成が大きく阻害されることとなる。かさ高いルイス酸との間ではフラストレイテッド・ルイスペアのような特殊な相互作用が期待されることから、本年度はトリアルキルボランなどルイス酸のかさ高さに注目し、かさ高さに応じた平衡定数の変化などルイス酸との相互作用について調べることとする。高度に分極した反応場を用いた新しい様式での小分子の活性化が期待できる。
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