2015 Fiscal Year Annual Research Report
ビタミンB12酵素に学ぶ感応性化学種の制御と触媒機能
Publicly Offered Research
Project Area | Stimuli-responsive Chemical Species for the Creation of Functional Molecules |
Project/Area Number |
15H00952
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
久枝 良雄 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70150498)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ビタミンB12 / トリフルオロメチル化反応 / コバルト-炭素結合 / 電解反応 / ラジカル種 / 光反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では天然のラジカル酵素であるビタミンB12の機能に着目し、感応性化学種であるコバルトー炭素結合をもつアルキル錯体の生成制御と触媒反応への多面的な応用を目指している。B12酵素の反応機構に学び、温和な条件でCo(I)種を生成できる反応系を見出し、感応性化学種であるコバルトアルキル錯体を経由した新規物質変換反応を開拓する。特に、モデル系での成功例の少ないメチル基転移反応に焦点を当て、トリフルオロメチル化反応・パーフルオロアルキル化反応の新触媒としての応用を検討している。本年度は、以下のような成果を得た。 1)Co(I)種の効率的な生成法の検討:Co(I)種の生成法として電気化学的還元法を用い、効率的なCo(I)種の生成法を確立した。 2)コバルトアルキル錯体(感応性化学種)の刺激応答性およびラジカル生成能の検討:Co(I)種とヨウ化トリフルオロメチルとの反応により、Co-CF3錯体を合成し単離した。Co-CF3錯体をNMR法、MS等の分析により同定した。このコバルトアルキル錯体(感応性化学種)に光照射し、Co(II)種とラジカル種が生成することを見出した。また、Co-CH3錯体とCo-CF3錯体の安定性の違いを見出した。 3)トリフルオロメチル化反応への応用:Co-CF3錯体とオレフィンの存在下で光照射すると、トリフルオロメチル体が生成することを見出した。また、電解化学的な活性化と組み合わせることにより、触媒反応への応用が可能であることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画どおりCo-CF3錯体を合成し、光によりホモリシス開裂してCF3ラジカルが生成することが確認できた。また、Co-CF3錯体とオレフィンの存在下で、光照射することによりトリフルオロメチル化反応が進行することを実証した。更に、電気化学還元により連続的にCo(I)種を生成させることにより、触媒的トリフルオロメチル化反応が進行することを見出した。従って、順調に研究が進展していると言える。 今後は、この手法を種々の反応に展開し、種々の基質を用いたトリフルオロメチル化反応およびパーフルオロアルキル化反応を実施し、本触媒反応の適用範囲を明らかにしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、Co-CF3錯体およびパーフルオロアルキル錯体の生成と開裂挙動に焦点を当てた研究を実施した。ほぼ計画通りの研究成果が得られたので、次年度は種々の基質に応用したい。 1)トリフルオロメチル化反応について、種々の基質を用いて反応を行い、適用範囲を明らかにする。すなわち、電子豊富オレフィン、電子不足オレフィンのトリフルオロメチル化反応に対する反応性の差を明らかにする。 2)トリフルオロメチル化反応のみならず、パーフルオロアルキル化反応について検討する。予備実験では、パーフルオロアルキル化反応も効率良く進行するので、期待通りの成果が得られると思っている。また、基質の構造特異性についても検討する。 3)触媒効率(ターンオーバー数)を上げるための工夫を行う。
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Research Products
(8 results)