2015 Fiscal Year Annual Research Report
外部刺激による動的構造制御を特長とするπ電子系ユニット不斉集積ポリマーの創成
Publicly Offered Research
Project Area | pi-System Figuration: Control of Electron and Structural Dynamism for Innovative Functions |
Project/Area Number |
15H00994
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
長田 裕也 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60512762)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | らせん高分子 / 不斉触媒 / 高圧力 / 光学活性 / ポリ(キノキサリン-2,3-ジイル) |
Outline of Annual Research Achievements |
タンパク質やDNAをはじめとする生体高分子の多くは、分子内に精緻な不斉らせん構造を有しており、機能性官能基を3次元空間内に適切に配置、動的にその構造を制御することで、基質特異的な酵素活性や遺伝情報の記録・複製のような重要な生体機能を発現している。近年、ポリアセチレンやポリイソシアニドに代表される、合成高分子の不斉らせん制御に関する研究が盛んに行われてきた。特に最近では、芳香環のオルト位を連結したらせん状分子であるオルトアレーン類の合成法の開拓とその物性解析に多くの注目が集まっている。ベンゼン環やナフタレン環等の芳香族化合物に代表されるπ電子系ユニットは、電子・光物性・磁性等の多彩な機能を発現することが知られており、その動的な高次構造制御・不斉空間制御は、新たな機能性化合物群創出への足がかりとして、極めて重要な研究課題となっている。本研究ではπ電子系ユニットであるキノキサリン環がらせん状に集積化したポリ(キノキサリン-2,3-ジイル)について検討を行い、高圧力印加によるらせん反転現象の詳細について検討を進め、ポリマー側鎖と溶媒の組み合わせが、圧力応答に対して重要な役割を果たしていることを明らかにした。さらに、π電子系ユニット連結構造に由来する剛直ならせん骨格を活かした不斉増幅型触媒の開発にも成功し、低い光学純度の原料から合成した高分子不斉配位子が、極めて高い光学純度の生成物を与えることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ポリ(キノキサリン-2,3-ジイル)の圧力応答特性について詳細に検討を行ない、他に類を見ない特異な圧力応答特性を明らかにし論文発表を行なうことができた(Chem. Commun., 2015, 51, 11182)。また、π電子系ユニット連結構造に基づいた剛直ならせん骨格を活かした不斉増幅型触媒の開発についても順調に研究が進展し、論文発表によって大きな反響を得ることができた(Angew. Chem., Int. Ed, 2015, 54, 9333)。現在既に、π電子系ユニットの特性を活かした高効率発光性ポリ(キノキサリン-2,3-ジイル)の合成に成功しており、特許化の手続きを進めている。また、本学術領域内の共同研究(金沢大学生越グループ)によって、キラル環状化合物の溶媒依存性らせん反転を見出しており、溶媒依存性キラリティ反転がポリ(キノキサリン-2,3-ジイル)類に特有の特殊な現象ではなく、キラルフレームワーク全般に適用可能な普遍的な現象であることを示唆する結果を得ている。以上より、本研究は当初の計画以上に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題では、引き続きポリ(キノキサリン-2,3-ジイル)類の高圧力応答挙動の解析に加えて、領域内共同研究によって供された種々のキラル分子の応答についても評価を進める。また、高効率発光性ポリ(キノキサリン-2,3-ジイル)の円偏光蛍光特性とそのスイッチングについて、研究を進める予定である。また、研究計画書に提案した通り、ポリ(キノキサリン-2,3-ジイル)のシークエンス制御による光学特性のチューニングについて研究を進める。また、金沢大学生越グループとの共同研究については、キラルピラーアレーン類の溶媒依存性キラリティ反転における計算科学的な解析と、単結晶X線構造解析を組み合わせた、原理の解明を進める予定である。
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